さらでだにあやしきほどの夕暮れに荻ふく風の音ぞきこゆる(斎宮女御)

『そうでなくても不思議なほどの夕暮に、荻を吹き渡る風の音がする』。「荻」は秋の七草に数えられないが、初秋の風景には欠かせない。
秋風の歌を振り返ってみよう、崇徳院の歌にも風になびく荻が詠まれていることに気づく、和歌でこの二つは合わせて詠まれるのが基本なのだ。
今日の歌は字面からは分かりにくいが、「斎宮集」を見ると恋人を待ちわびながら詠まれたことが分かる。だから歌中の「さらにだにあやしき」は『なぜだか無性に恋しくなっちゃう』というニュアンスを帯びていて、そんな夕暮れに荻を吹く風の音が聞こえる、つまり『寂しさがことさら募るのよ!』という歌意が理解ができる。ちなみに「荻」には「招く(おく)」が掛けられているから、待ちぼうけのじれったさは一入だ。

(日めくりめく一首)

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