さくら花夢かうつつか白雲のたえてつれなき峰の春風(藤原家隆)

『桜の花が見えたのは夢か現実か。白雲の花は消えてしまった。峰には花を散らす春風が吹いている』。難解な新古今歌のなかでも特にそうであるような歌だ。詠み人の家隆は定家のライバルとして知られるが、どちらがより新古今歌的かと問われれば、それは家隆の方であるかもしれない。
新古今歌の特徴のひとつが「絵画的」そしてもうひとつが「物語的」だ。歌がそのいずれかであればまだしも、両方の特徴が現れていると一瞬立ち竦むこともあろう。そしてそのような歌は、家隆の方が多い。何度も恐縮だが、新古今歌は訳そうなどと考えてはならない。言葉で結んだ映像に酔うのだ。

(日めくりめく一首)

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