うちはへて音を泣きくらす空蝉のむなしき恋も我はするかな(よみ人知らず)

心身二元論をご存じだろうか? 「我思う、ゆえに我あり」の文句で知られる17世紀の哲学者ルネ・デカルトが唱えたとされるが、要するに心と体はそれそれ独立した存在であるという考えだ。ちなみに二元論を西洋的、一元論を東洋的とする論もあるが、私は意に介さない。
さて、それでいくと今日の歌などは二元論の走りかもしれない。『ずっと泣きじゃくっている。なんてむなしい恋を、私はしているんだろう』。適訳はこうだが、ポイントは「むなしき」に係る枕詞「空蝉(うつせみ)」だ。空蝉とは“蝉の抜殻”のことであって、体から魂が抜け出てしまい気力がない様を暗喩する。これは紛うことなき二元論、日本人は図らずも10世紀には心身二元論を唱えていたのだ! と思わないでもない。

(日めくりめく一首)

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