うぐひすの谷よりいづるこゑなくは春くることをたれかしらまし(大江千里)

レノンといえばマッカートニーであるが、梅といえば「うぐいす」なのである。この抜群の取り合わせははやくも万葉集にみえる。このような景物の定型化は漢詩に由来することが多い。漢詩でも梅にうぐいすは常套であり、とくに杜牧の七言絶句「江南春」※は有名である。さて、今日の作者は和漢詩文に優れた大江千里である。先に断っておくが「せんり」ではなく「ちさと」と呼んでほしい。さもなければ格好悪いふられ方をするやもしれぬ。千里は漢詩句を和歌にアレンジした「句題和歌」を撰集し、漢詩の和歌との橋渡しを担った。この歌は春の訪れを立春という暦ではなく、うぐいすの声で知るというのに見どころがある。春の感じ方も十人十色だ。

※「千里鶯啼緑映紅(せんりうぐいすないてみどりくれないにえいず )」(杜牧)

(日めくりめく一首)

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