酒杯に梅の花うかべ思ふどち飲みてののちは散りぬともよし(大伴坂上郎女)

新古今集が好きな人は万葉集も好むが、万葉集が好きな人はたいてい新古今を相手にしない。私の思い込みかもしれないが。さて、ひとえに和歌と言っても、当然ながらさまざまな歌風・表現がある。『花見だ花見、酒もってこんか~い! 死ぬほど飲んだら、散ってもいいぞ』。昨日一昨日とご紹介した新古今歌とのギャップに驚かれたかもしれない。この花見の乱痴気騒ぎは、そのまま現代に繋がっているかのようだ。ちなみに古今集以後、勅撰集に「酒」が詠まれた歌はほとんど見られない。詠み人は大伴坂上郎女、万葉集を代表する女流歌人だ。大伴旅人は兄、家持は甥っ子にあたる。おそらく大宰府(筑紫歌壇)で詠んだものであろう。連中の賑やかさがダイレクトに伝わってくる。

(日めくりめく一首)

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