紫陽花の八重咲くごとくやつ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ(橘諸兄)

よみ人:橘諸兄 、所収:万葉集

今日は紫陽花の歌をご紹介しよう。紫陽花はなかんづく雨に濡れた様が愛でられ、日本の初夏になくてはならぬ花となっている。むろん和歌に詠まれて当然という向きもあろう、しかし実際は全くそうでないのである。躑躅は辛うじて古今集の恋に見つけられたが、私のつたない調査力では少なくとも八代集に紫陽花を見つけられず、なんとか万葉集に発見した。あった!という喜びの反面、内容は語るまでもない。八重咲く花のようにいつまでも栄えてください、というおべっかである。しかしなぜ、平安朝に紫陽花は詠まれなかったのか? 原種は“ガクアジサイ”だが、これは主に海岸に自生していた。推測だが、場所がら都人にとっては目に留まらぬ存在だったのではないか。菊の様に色移る紫陽花、そうでなければ平安歌人が歌わぬはずがない。

(日めくりめく一首)


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