消え返り岩間にまよふ水の泡のしばし宿かる薄氷かな(藤原良経)

泡沫、中世日本人にとって浮かんでは消えるあぶくこそ儚さの象徴であった。それが宿を借りたかのように一服の休憩をとる、氷の冷徹は時間をも止められるようだ。
さて、同じ「淀みに浮かぶ泡沫」でも鴨長明は写生が濃く平凡あるのに対し、今日の良経は新古今の手練れらしく退廃を極める。長明の散文になくて良経の短歌にあるもの、それは言葉だ。「迷ふ」「暫し」という空しさを掻き立てる洗練された和歌の言葉だ。

(日めくりめく一首)


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