今日も「よみ人知らず」による秋の月をご紹介しよう、詞書にはズバリ「八月十五夜」。『月の光はいつもと同じ中秋の名月を、ことさら特別感をもって見るのはその「心」に理由があるのだ』。この歌は極めて冷静で、示唆に富んでいると思う。現代でもお月見といえば「中秋の名月」のみを示す風潮があるが、それはまったくお門違いというもの。言うまでもなく月は年中空に浮いていて、四季折々に美しい表情を見せる。にもかかわらず秋の夜のみを有り難がるなんて、普段は月などまったく気にしない無風流な人間を宣言しているに等しい。
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