思ひやれ真柴のとぼそ押しあけて一人ながむる秋の夕暮れ(後鳥羽院)

さて、連日三夕の名歌をご紹介してきたが、今日もしつこく秋の夕暮れをご紹介したい、後鳥羽院だ。『想像してみろ! 真柴のとぼそを押し開けて、俺は一人で秋の夕暮れを眺めているのだぞ』。「とぼそ」とは「枢」と書く、まあ要するにボロい扉だ。これを押し開けて独り寂しく呆然と夕暮れを眺める、都での傍若無人ぶりを考えるとあまり想像したくない哀れな姿だ。
配流先の隠岐で詠んだ「遠島御百首」には、今日のようにかつての帝王らしく勇ましい命令調の歌※1もあり、一方で都を偲んで涙する歌※2などもあって興味が尽きない。ところで「思いやれ」とは誰に対して命じたのだろう? 皆で議論したら盛り上がるに違いない。

※1「我こそは新島守りよ隠岐の海の荒き波風こころして吹け」(後鳥羽院)
※2「なにとなく昔語りに袖濡れてひとり寝る夜もつらきかねかな」(後鳥羽院)

(日めくりめく一首)

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