夕づく日むかひの丘の薄紅葉まだき寂しき秋の色かな(藤原定家)

詠み人は藤原定家、彼らしくない素直な詠みぶりだが、やはり採られたのは京極派による玉葉集だ。『夕日が落ちる向かいの丘の薄色の紅葉、はやくも寂しい秋の色だなぁ』、冬季に「秋」の字が見えるのはご愛敬。定家の秋の夕暮れというと件の「浦の苫屋」の印象が強いが、このように紅葉と落陽の色を重ね、穏やかに染み入る感情もあったのかと驚きさえする。いったい彼はこれをいつ詠んだのだろう、先の三夕の一首は若干二十五歳の詠歌であった。今日の歌には寂しさを達観した包容力がある。

(日めくりめく一首)

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