古へのあふひとびとは咎むともなほそのかみの今日ぞ忘れぬ(藤原実方)

昨日ご紹介したように「葵」は大抵「逢う日」と掛けられる、ゆえにその歌は恋になる傾向が高い。今日も恋の部から、出展は新古今和歌集である。『前に関係した女どもは怒るかもしれんなぁ、でも昔の祭りで出会った女、あいつはまじで別格だった!』。
適訳には歌面に描かれきれていないシーンを加えている、それが「祭」だ。歌には「そのかみの今日」とある。「そのかみ(昔)」は昨日説明したように賀茂神社背後の「其神山」に掛かるが、ことさら強調している「今日」とは「葵祭」その日を指しているのではないか、と私は推測する。葵祭の今日、昔の同じ日に出会った女を思い出して、ムフフと妄想している。詠み人がトラブルメーカーで知られる藤原実方であるから、こんなのもありだろう。

(日めくりめく一首)

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