入方の影こそやがて霞けれ春にかかれる有明の月(宗尊親王)

よみ人:宗尊親王 、所収:風雅和歌集

昨日の為家は「軒の玉水」であった、ではあなたは何に春を感じるのか? 暫し考えてみてほしい。雪の間に覗く蕗の薹、光を映す雪解け水… 百人百色の春の予感がそこにあるはずだ。ここで暖かさ、なんて言う野暮は決して歌人にはなれない。『落ちてゆく影はそのまま霞に包まれて消えてゆく、春に出会えたそんな有明の月』。宗尊親王は空気の色にそれを感じた。冷たく張り詰めていた朝の空はしだいに湿気を帯びて靄がかってゆく、その薄絹に包まれて穏やかに沈んでゆく月影。宗尊親王は和歌という言葉の筆で、モネにも勝る風景画を描いてみせた。

(日めくりめく一首)