今日こずは明日は雪とぞ降りなまし消えずはありとも花と見ましや(在原業平)

『お前んちの桜、今日来なければきっと明日は雪のように散ってしまうだろうよ。そりゃ本物の雪じゃないから消えないと思うけど、そんなの花と言えるかい?』
唐突感があったと思う。それもそのはず、この歌はある女主人への詠みかけに応えた返歌なのだ。久しく遠ざかっていた男、それが桜の盛りにあわせてひょいと現れた。女は言う「何よいまさら、変な噂が立っちゃうじゃない!」。これに応えたのが今日の歌というわけだ。詠み人は在原業平、訪れた目的はあくまでも桜の花というわけだ。フムフム、さすが日本史に名を残すプレイボーイ、勉強になる。かなり強引な言い訳だが、むしろこの強引さが彼の魅力なのだ。
さてともかく、業平の歌はそれだけで完結しないものが多い。やはり伊勢物語を通じて楽しむのが正解だろう。※古今集に業平作の歌は三十首あるが、これらはすべて伊勢物語にも採られている

(日めくりめく一首)

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