昨日述べたように万葉集の七夕歌は単純志向がすぎて鑑賞に値しないのも多いが、一方で万葉集だからこそ採られた大胆な歌もある。『長く待ちわびたが、秋風に乗ってようやく織女の声が聞こえた。さあ、腰紐をほどいて行こう』。この歌はその代表例だろう、なにせ逢瀬を待ちきれぬ牽牛が女のもとへすっ裸で行っちゃるぜ! という歌なのだから。平安以後の勅撰集なんぞには決して採ることができない傍若無人の歌、これも万葉集の魅力の一つである。
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