『まどろみから覚め眺めろと大きくなるのか、月に届かんとする麻の衣を打つ音』。若い感性には砧の風情は届かなかったのだろうか? 今日の歌では衣を打つ音がまどろみを許さぬ不快な目覚ましのようにも受け取れる。
しかし昨日もそうであったが、砧と言えばなぜ月の下なのだろう? これは定めて白楽天の影響である。「聞夜砧」という詩には秋の夜長、軍隊に取られた夫を思い砧を打つ妻が詠まれている。冷々とした月の下、女が衣を一回打つたびに一本の白髪が増える、夜明けには真っ白になっているだろう、という内容だ。もしかして平安の女性にとって、砧とは憂苦の象徴であったのかもしれない。
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