おのづから言わぬを慕ふ人やあるとやすらふほどに年の暮ぬる(西行)

かつて憧れた春。しかしいざ目の前にすると尻込んでしまう、平安歌人たちが歳暮に寄せる心の揺らぎを数首鑑賞してきた。表層に違いはあれど通底するのは畏怖の念、止めどなく行き過ぎる時間への諦めや抵抗の爪痕だ。平安、とくにその末期を生きた歌人の心には、この「無常」の棘が根深く突き刺さっている。ところがどうだ、そんなセンチメンタルから超然とした人間がいる、西行だ。『俺の気持ちを察して遊びに来てくれる友達がいるかなと期待してる間に、ああ年が暮れた』。人生? 無常? 今は知ったこっちゃない。俺の後悔はただ一つ、一緒に年を越す友達を自分から誘わなかったことだ。…力がすっと抜けてしまった、西行はやはり西行であった。

(日めくりめく一首)

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