ML玉葉集 秋中(令和元年九月)

令和和歌所では、ML(メーリングリスト)で歌の交流をしています。花鳥風月の題詠や日常の写実歌など、ジャンル不問で気の向くままに歌を詠み交わしています。参加・退会は自由、どうぞお気軽にご参加ください。
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今月のピックアップ五首

「奥山は色づきするか鱗雲汝がたゆたへば心秋なり」

「茶摘み後の老葉も古葉もそのままに燻し煮出して京番茶」

「菊の香にうつらうつらとまどろめば七百余年の飯の炊けたり」

「君がきく花のかほりの溢れては我が盃の干る時もなしたれひと」

「振り向く人のありもせで入日沈むやラムボールのごと」

今月の詠歌一覧

荒木田に藁鋤き込みて十重二十重重ねる度に鏝をかへして
高麗川の日高の里の夏暮れてちっちゃな胸に満ちる草の香
はかなしと言挙げもせぬプラタナス風なき朝に大葉を落とし
幼な児の放てる片言的を射て真直ぐなる目にぞおどろかれぬる
風はまだ驚くまでに吹かねども秋になるなり鈴掛けの木々
秋の雨ところどころに影させば木間よりけに蝉の声ごえ
儚げになりゆく蝉の音も細りそよ湧きいづる秋虫の聲
とほくよりやがてさやけきオーボエの実りの秋やいまぞ待たれる
秋雨はいたくな降りそ稲穂垂る田の面の人の刈らぬ間だにも
蝉時雨岩に染みゆき消えゆきて秋宵の野の声に変わりぬ
秋風に黄金の波や立ちにけるこの年月の光宿しつ
頭垂れ学びの道は遠かりと実れる稲穂見習いたしや
すすき野に光の欠片見つけける秋を告げむと咲く女郎花
秋請えば花のありかは野の花の桔梗刈萱吾亦紅
友綱のむすひをときて離れゆけはやかてかなしき夏のおふねや
潮の香を含みて咽ふ夜深きに雁か音わたる水門の葦原
ひるによを継きつゝわたる雁か音の影や待たれる秋の夜長は
秋風はなほまだ遠く女郎花わびしき野辺に一人しほるる
心には高野の紅葉見ゆるとも手習い叶わぬ我が身恨めし
木漏れ日のスポットライト浴ひなから揚羽のダンス止むことをしらず
愛(うつく)しきギターの音色と蝶の舞立ち去りがたき森のステージ
その曲のその美しき音に値ふ君のありてこそあるその美しさ
天人の舞と楽とにきみひとり逢ひたてまつる和田堀の宴
舞も音もおへどはかなき揚羽野の値ひがたきしるきみぞめでたき
君が手になれば言の葉色づきて秋の枕は錦なるらむ
秋草の千草青草吹き散らし勿来の關も破りて通ほると
重陽で軒に紫九つもだけどだけれど花は朝顔
天の川雫は降りぬ秋の野に朝日に光る珠とかはりて
白露に我が衣手は濡れにける残るかほりもほのたちのぼり
見せばやな秋野に散れる白露は臥待ち零る涙なれるを
思ひわび泣く音にまがふ秋の夜の枯葉に迷ふ揚羽蝶かな
きくきかぬ思ひはひとつ重陽の花まつ人はあはれなりけり
かりそめの田の面の人は秋風か今日はいづこの稲穂吹くらむ」
つゆぞおかぬ野辺の白珠待ちわびて野分の風に言伝てをせむ
Faxaiてふ野分は街のあちこちに葉っぱのコラージュのこして去りぬ
風の色に心づくしの秋みれば月また涼し道ゆきの空
月見夜に座布団二枚急ぎ持ち軒に並べて君を待つらむ
誰(た)の跡と足跡眺め首かしぐ原に集いし月兎らは
名月を讃える声に聞こえけむ尾花鳴る音に虫の歌声
見えずとも楽しかりけり秋の月まつ虫すだく野辺にまかせて」
雲居はるか月のひかりは見えねども心づくしの秋は来るかな
手を伸ばし月の手ざわり肌ざわり気配と戯れまろび合わばや
嘆くまじ月影無き夜の暗きとて雲上の月影燦と満つなる
雲の海のたゆたふ天の浮橋を踏みては路を照らす夜の月
観るほどにかかる衣の朧なる影束の間の月めぐるとも
天津風月影通い路閉じとせば我覗き入り雲の波上
雲上に月人達と手とり輪をなして霓裳羽衣の舞をば舞わん
あきかぜはまちかどぬけてそよそよとゆうにやさしうゝべなふものかな
秋風は街角抜けてそよそよとゆうに優しう肯ふものかな
こうべ垂る黄金の稲にさえずりて稲負鳥は時を告げなむ
み空ゆくとわたる光りせうせうに影も高みか木ノ暗れよきる
秋月の山べさやかに照らせるはまだ紅葉せぬ数をみよとか
宵月に羽うちかはしとぶ雁の影の青さに秋を見つらん
道奥へふりさけ見れば十六夜にもの思ふとも影のともしき
鑑なす満ちるおもわも花ことゝゐやめづらしみ見れともあかず
ゆくりなく丈たかゆびの山端みゆさゝらゑをとこ白うをかしげに
天にます高べさわたり夕筒とゐるにまかせて遊びたまひし
影蒼くたなびく雲に長月のすぐ十六夜に星々の散る
まけながく道知らませば出でゐかす紐解きまけな天つ星々
十六夜に浮きも現も空蝉の世やも二ゆく今ぞしるとは
朝宵に見む時さへや明け星の光りさやけき秋風のころ
今よりは欠けゆくものと知りながらなほ立ち出でぬ十六夜の月
秋の夜に己が錦にくはえむと龍田の神のいでたまふとや
香霧解く花ぬすびとの影はなし翠まだ深き聖橋かな
風吹けばはらりと落つる土の壁主が去りし軒先の家(や)の
つばくろは旅のしるしに雲描き秋空高くひとふたすじの
秋つばめ同じあはれの心地かな立ち憂きがちに空ながめする
ちぎりけりたなびく雲にたち帰る古き友がきまたや逢ひみむ
つばくろや汝が越えゆきぬ秋空の閑けさつゝむ埴生の峠
もみじ葉のごとく色づく言の葉はいかなる秋を描きて舞はむ
歌人は秋の空行く野分かな言の葉に吹く南風暑し
吹く風に時を知りてはとぼとぼと神は納めん雷太鼓
何処へと鳴神乗れる雲流れんただ秋空に欠片残れり
吹く風のうつろふ兆し天の声七十二候を和歌に伝ふる
雷や叩き尽くして秋の夜に恐る恐ると試す一声
風まぜに思ひ乱れて散りにけり野辺の白玉君に見せばや
色に染む秋さる人の戯れになほや露けき野辺のまつ虫
柴垣にたれ松虫のりんりんと風茫々ととして月のよすがら

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