ML玉葉集 冬部(霜月)

和歌所では、ML(メーリングリスト)で詠歌の交流を行なっています。
花鳥風月の題詠や日常の写実歌など、ジャンル不問で気の向くままに歌を詠んでいます。
参加・退会は自由です、どうぞお気軽にご参加ください。
→「歌詠みメーリングリスト

今月の三首

「北風もゆるみて凪ぐや墨水に 巴の字を描きて都鳥ゆく」
「来ぬ人を待ち立ちつくす足元に ポインセチアの白き花咲く」
「ひととせの光も雨もみにとどむ 風にふかるる木守りの柿」

今月の詠歌一覧

南天の涙のごとしあさつゆは この世の心明日に残さじ
花貫の谷に紅葉す枯紫陽花 保ついのちは黄に輝きて
常陸に花貫の谷あり紅葉三分なれど 来たる錦の頃をおもへば
花なしとひとにはきけど花貫の 瀬音にまさる錦なるらん
袋田の峰よりおつる珠簾 分れるも会ふも時のまにまに
袋田の瀑も微かになりゆけば 錦をまとふ里の夕暮れ
白珠は峰を灑ぎて秋氣充つ 仰ぐ錦に渡る山風
鬼門には南天植ゑよ水漬かねば 家は久しく幸はひたまへ
ありながら月をば待たむもみぢ葉は 夜深き山の雨にぬれつつ
湖西ゆかば東壁に雲亂れ飛ぶ 北國道に急く序曲冬也
山茶花と口遊みつゝあかぎれの 手を擦る母の白い手袋
慣れ来たるとしつきおほくありければ 君の心は深く知られむ
もりきたる君がこころざしふかければ なほしだりつつやすらひてをり
我が友はメキシコのリリー去りてなほ ダイヤモンドの笑みを残して
明昼に長駆を伸ばす影法師 五尺五寸が大路を渡る
月なくてゆるみてわたる秋空に 眠たげに視ゆネオンの光
眺むれど月なき空や 主もなき家を訪ふひともなし
ぽっかりと張り合いもなき夜光燈 月かへらんやわれもかへらや
眺むれど月なき空や 主もなき家を訪ふひともなければ
胡麻を手に取りて喰はゞや若人よ はたとせのちの雨の巷間
朝未だき侘の室には光差し 分け隔てなき師のやさしさの雨
三日月の儚き艶の夜の〆に 博多細麺大盛り啜る
残り葉の落せる影の淡ければ 冬空の下桃色を襲ね
わすれつるものにもあらず冬支度 暮れるををしむ歳にしあれば
この御代に逢ふも遠ほくになりつれば 昔を今になすよしもがな
薄氷張り詰めたるや仰ぎつゝ 月なく恨むも急ぐ帰り路
初氷張れるやいづこ見上げれば 月綴ぢこめて押黙りをり
うすひらの浮びて消える硝子盃 遠き日望む陽の名残かな
とりどりに咲くともわきて見定めん 君知らざる我にはあらじよ
チュピチュピと白鳥子鳥汝が渡る 広路はひろいなよし、渡せるか
赤星を探せど老の眼鏡には 赤色灯がまたゝくばかり
赤星を捜すいとまのあるならば 風呂でも洗ひて家事をせんかい
今日のぼる月のありかをさがせども 眠きぞ朝は厚布団の中
天までも雲の布団を被りしままに 朝をわすれて夢見るらむや
満ちてゆく月はゝるともゆく人は 身をかゞめつゝ冬をむかへぬ
双鶴の優にやさしく交ふ聲の 夜琴に亘る冬の葦原
ふたつ鶴冬の木枯らし吹けるとも かれてのゝちもあはんとぞおもふ
葦分けの小舟に一人綱手絶へ 鶴一聲に迫る夕闇
言とふたむかしをとこのしるべさし 来たるや今ぞ都なるらむ
昨夜君旅立ちしこと知らざりき 凍れる涙あとに残して
潤と打つ久の字に長き連綿に 渇に礼をひき年を綴ぢんや
林間に甘栗焼いてワイン蒸し ミラノっ子湧く冬の競馬場
どこまでも只どこまでも 君の空映す泪の青の深さは
武蔵野にこの青空に雨が降る 黄葉が雨とぞ降りて積む
同じくは氷雨今日降る枯葉のやうに 降らば冷たい心も和むのに
青のもと青が生まれて青はそだつ やがて青朽ちまた青となる
あをやあを丹に吹く生命はあをぎみて 空のあをさをおもふべらなり
人波にみちてはかけるむねの裡 抱えてけぬるそれぞれの道
朔風もけさはゆるみてみへるかな 空盃を中空に伏せ
北風もゆるみて凪ぐや墨水に 巴の字を描きて都鳥ゆく
藍空に晒す衣は朔風の はらひのけたる木の葉に染まり
枯葉鳴る山路の靴を停めれば 蒼天に盈てる無音の響き
薄明に風立ち騒ぐ硝子窓 黙しては映すユトリロの空
光あれ常盤の森の翁も恋ふ いまし晴れ間に覗く陽光
あはれ知る人口知能歌詠まば かへしとみせて機嫌伺はん
錦ほど輝くものに定めあり うつろへばこそ愛あたらしけれ
夢深く路を迷ひて藪交路(やぶこうじ) 色をたずねて明日を迎へむ
雲まとふ空と重なる塀の上 犬の一声落ちる子ダヌキ
山里に花をしのぶ葉のおもひ 光の錦舞うはながたみ
其々のおもひ残りし風景を 三十一筆が描く不思議さ
一葉の色を残して垂る桜 地に語りかく共に待たむと
君いづる時を待ちけりサンシャイン 秋日は照れる絶えでと歌へ
朔の夜は人の心に月降りて 見えぬ幸せ満ちよと照らす
三日月の懐深く抱かれし 阮は麗しただ酔ひしるる
行き過ぐるかくも多くの人影は 曇天に消えただ風と吹く
枯れてなお昔なぐさむ忘れ草 藪を掻き分け道をとぶらふ
柔らかな冬陽の空に虫の声 舞ふやうに飛ぶは雪下(せっか)なり
来ぬ人を待ち立ちつくす足元に ポインセチアの白き花咲く
屋台ひく「い~しやぁ~きいも~」の 声聞けば心ほかほか冬の夕暮れ
つきほしはひかりをうつすだけなれど などかくもあまたのことおもひやらせむ
屋根の下星の数ほどある家事に 星も思わず瞬きをせり
海を越えギリシャ神話の物語 カレンデュラとは水の精なり
いいなぁと口元ゆるみ芋おもふ 詩季織々の食おもしろし
空見上ぐ小さく赤きカランコエ 冬の薄日をそっと見守る
冬枯れの葦辺に降りし双鶴の 交わす呼び声優しからむや
ねもころに心つくしてふたつ鶴 葦根のごとく影をからめて
思い出す銀座のあかりが消えた日を 揺れるあかりと寒き夜
冬風にぽつんと揺れる蓑虫の 声もあらぬに鳴くと詠まれて
水凍り漆黒の冬訪れし 五色隠して春を産まんと
冬黄葉枝に下がりて風を待つ かさこそさかと一人つぶやき
焼き栗のはじけた笑顔香りよく ワインでおめかしボナペティート!
あをぎみるそらおくふかきつきあたり むかしみたゆめ青のまにまに
海がある青の群がる海がある 群がる青に空もまぎれる
満月に霜の降りたるひさかたの 風のつめたさ闇冴えにけり
わが衣手づから染むる龍田姫 楓や蔦や赤や黄色に
まだ青き葉かげにやすむ二羽三羽 飛ぶ日を待てる金色の鳥
花ひらき紅は増すなりさざんかや たき火にさそふ子らの声ききて
草も枯れ風も荒ぶる垣なれど 色は身に染むさざんかの花
ひととせの光も雨もみにとどむ 風にふかるる木守りの柿
三日月の籠でゆめみん白うさぎ 赤星の野で友と遊ぶを
初霜が置く白菊にあらねども 雪に紛うや金盞の花
木枯らしに身を震わすや白き露 時を待たなむ五色宿して
満ち欠けの理(ことわり)しめす秋の月 酒もてろうず人を眺めて
そらにあるほしやあまたにふりそそぎ たねのめさます慈雨となるらむ
朔風(きたかぜ)の訪れありき秋空に 舞ふや錦の衣まといて
木枯らしが払いのけたる葉衣や 身震いしつつうたた寝る芽よ
澄みわたる秋夜のごとき御心を 宿しし御歌あかず眺むる
とくかへり行李にしまふわがころも うつる秋葉の影とどめんと
とくかへれ月はうるはしうたよまん えいあい語るとき遠からずや
仰ぎ見る夜空に三日月出で居れば 変わらぬ街に冬の立つを知る
一年に再び来ます君待てば 傘貸す人はあらじと思ふ
行き過ぎる今際の月は霜月か 悔いはないかと想いは巡る
澄み渡る季節の中に咲く花や 想い寄せたい金盞の花
見渡せば五色の糸もなかりけり 湯気立つ街は冬の出立ち
舞い落ちる枯葉に想いかさねたも いまは霜月飛ぶ渡り鳥
眺めては浅き夢見て久方の 今宵十六夜闇は蒼色
霜降りる風の冷たさ久方の 月夜を仰ぎ闇冴えにけり
ユトリロはフランスの画家昔知る 鉛色空光あらしめよ
芋焼きて負うた火傷にカレンデュラ今年のうちに治るようにと
少し前大好きだった安納芋 今は断然シルクスイート
天婦羅はまがふことなく紅東 蒸かし芋なら鳴門金時
行く秋に別れを惜しむ月読みの 涙凍てつく冬は来にけり
パンクロック荒ぶる因の鉄の女 本名のみは少女のごとし
平成もゆけば懸け橋ひたに立つ ただすめらぎの謙虚さに謝す
時雨止み傘売る武士の月代や 時おだしかれよと希ひつぶやく
赤星の導く海の静かなる 冬に持てゆく舟を進めて
大地の慈悲のもとへとかへるらむ 琴のしらべをささげたまはな
かぐはしき言葉の花を咲かしめな 幸(さきは)ひみつる敷島の道
うつりてもなほ愛(を)しみたり空のはて いとほしまむはをとこぶりなり
わが恋は山橘にいでぬらし しのびあへずも色ひたるかな
送られつ送りつ果ての年ノ瀬へ 色を捨てつゝ一日一日を
おほけなく菊の宴に参内し 雲居の公を仰ぐ嬉しさ

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