ML玉葉集 春上(如月)

和歌所では、ML(メーリングリスト)で詠歌の交流を行なっています。
花鳥風月の題詠や日常の写実歌など、ジャンル不問で気の向くままに歌を詠んでいます。
参加・退会は自由です、どうぞお気軽にご参加ください。
→「歌詠みメーリングリスト

今月のピックアップ三首

「武蔵野に夙くやしらさね春風に はるやとくかと魚の氷叩く」
「眷属の咆(ほう)に応えて白妙の 衣をまとふ秩父三峯」
「梅が枝に寄せる願ひは未だ夢の 風に委せて薫る白波」

今月の詠歌一覧

神鳴れる音尓しつまる雁がねの 羽根うちぬらす春の夜の雨
のぼーるの君も咲ふやうたよみの 編める球戯の聲あげて
寒空に子規も追ひけり上野山 白球描く夢の架け橋
裾からげ脛に泥打つうたよみの なげつる珠のあとを訪ひて見む
鬼はれる宴に投げし豆つぶて 芽吹けば共に天に遊びせん
みそか日に世にくはゝれる我なれば なべての春をながめくらさん
白雲は旭日籠めて春立てり 歌の枕をわれにえさせよ
春嵐をふくむや青き煙雲は 東風にふかれておちぞゆくかな
豆鉄砲くろふてもみよ情け なしさゝのさかなにくはへてはみん
惑ふほどこれやあまたの梅ならば 日に百たびの宿りもいたさむ
楼影を浸して霞む墨水に 春ゆく君の跡をとはまし
問ふ人もなしやひよどり聲のこす 軒端にかゝる梅ヶ枝揺れて
斐伊川に朝霧たてるころなるか 雲沸き起こる八重垣の里
千筋なす願ひをよれる斐伊川を 注連縄にして春を寿ぎ
ふるさとにおきてのこせしものなしと おもへどなどて春は恋しき
袖したにこれるおもひのありてこそ やさしきゑみに春のこほれる
湯気たてゝかける馬庭の石見駒 隠岐ゆく船の白帆はるけき
あけはなつ窗邊にかゝる白妙の 動けば充る墨堂の春
空の花まどへるほどに増しぞゆく いづれをけふの宿と知るべき
はかなくものこりけるかな梅の香は わが連れてこし春のさきがけ
まどふともつひにたがえず宿からむ 色をも香をもしらぬ我にはあらじ
さすがには興も盡きなん寒戻り 春を誇れる聲ぞまたるゝ
雪も解くインフルAに臥す春は 蟄居の命に軒端は遠く
あしひきの山の端霞む梅の香を 含みてひほふ雪の降れゝば
瞳閉ぢ春待つ人に白雪は 枝元毎につみてはきえゆく
水竟の増しゆくほどに舞ふ雪 今日を限りと花と咲きゆく
大船の楫取る利根の筑波嶺も ほどろほどろにときてゆくかな
鯨取る三保の松原春たてば 大船漕ぎてゆくらとゆくか
いさなとるみほのまつばらはるたてば おほふねこぎてゆくらとゆくか
朽木踏むあめの松原潮騒を 聴きつゝをらむ春の小舟や
住み慣れし相模を離れて 諫早へかへる人にかはりて詠める
さねさしの相模の浦の漣に 忘れ難きは故郷の春
武蔵野に夙くやしらさね春風に はるやとくかと魚の氷叩く
君が為春に贈るをたゆたへば 花の齢はもう貯古齢糖
千代是と定めもするや義理なるよ 恋にくちなむのどけをしみて
チョコ待てば千々にものこそかなしけれ 我が身にあまる袖広げつゝ
みなのもの我に得させよけふの日の 梅が枝かゝる笑顔得させよ
ひそやかに夜琴はりゆく春の気の 待つはタクトの一振其也
耶楊子の八重の州浜の春雨に 土の香し起てばなつかしみゆく
見渡せば夢唐船の影もなし 由比の渚に渡る春風
佐保姫の殘しもゆくか影見えて 四方の霞にくれる春日野
耐へつゝも小梅ほころぶ香を知れば 雪も名残の君ぞ懐かし
芝口の門出の春の柳環を 遠むまなこは氷雨を繰りつゝ
おもほえずふれる袂の香を残し 明け六つせまる芝口の春
うたゝねる猫も柳の白銀は 春のひかりにゆれゆれながら
主菓子のごめいをきかば見えずとも これぞうれしや春や近きと
白球やグラブ入る音高らかに 歌詠み編める言葉も乗せて
春の香に霞が立てるわが瞼 彼方に待てるむかしの君は
双袖(ふたそで)も濡れにぞ濡れる春の雨 落ちし雫はわが心かな
一つ傘雨なか歩き春さがし 君の髪には香り宿りて
寒空を駆け抜けてゆく球一つ 虹にもまさる橋をえがきて
鶯も梅も柳も祝いける 種を宿しし人の生まれを
衣手にのこる追儺の豆つぶて 涙に見ゆる追われし鬼の
春立ちて水面に立てる波の花 佐保姫の乗る船は近づき
春の戸をたたくは雪の玉水や 音を待つらむ北面の梅
鶯もいずこが宿と惑いけむ あまたの梅や今盛りなり
眷属の咆(ほう)に応えて白妙の 衣をまとふ秩父三峯
白梅の枝に増し咲く空の花 宿を探せる鳥は惑いて
わが宿と戻りて鳴けるうぐひすの 思ひもしらず香りのこりて
春立ちて宿に着くらむ惑いなく 色をも香をも知るやうぐひす
地の梅に香り姿を留めんと 代わり舞へるは空の梅花
手もすまに氷戸(こほりと)開ける日の光 春とも知らぬ魚に知らせんと
わが袖に抱きて詠みける言の葉は 異土よりきたる菓子より甘く
受取れど惑うや義理か本命か 行方は知らぬ恋の道かな
春雨にしばし足止む軒の端 土(と)の香は移る我が衣手に
春待てる枝に盛りや氷花(こおりばな) いよ輝ける春の珠添え
フィナーレのタクト止まらばぬばたまの 帳返りて霞やは立つ
天津にも春立ち風は吹きしくや をとめの衣野に重なりて
白銀の毛は春風に靡きけり 枝でうたた寝る柳の猫は
主菓子の御名を問わば草萌と 雪間の草に春は近しと
せめてもの花や草木の歌を詠み 色誘い出さん墨に隠れし
春立ちて早くも融くる氷には 歌に合わせる一番の風
遠近に今を限りと咲き沿へし 仄かに匂ふ枝の沫雪
梅が枝に寄せる願ひは未だ夢の 風に委せて薫る白波
うぐひすのこゑするまでを梅の花 ゑまひ給ひなはやち吹くまへ
眷属の雄叫び冬と去りながら 嶺に来たるは蜆売るこゑ
雨あがり朝の銀座に佇めば 何処からとなく漂ふ沈香
おどけおりついなのマメに打たれ おりおにのかなしやたれぞしる
東風ふきて軒端の梅に声きかば 鶯宿梅と呼び置けるかな
懸緒締め梅咲く里に居ます衛士 姿美々しく香りを競う
義理チョコは負担になると廃止され 業界人は嘆き悲しむ
梅が枝よさに香ぞ高きこころざしあれば 告げこせしるしたまへと
吾妻よりひと時離れ道奥へ 風さゑ吹けば此の年もまた
駒からの移る景色は道奥の 枯れ木ばかりと影の寒けさ
冬目気て日にけに寒し岩が根の 凝しき道を踏み分けぞ行く
水も無く見ゑこそ渡る川隈の 絶ゑ絶ゑに湧く音まで寒しき
葦ノ葉に夕霧立ちて鴨が音の 笑ふ気色に家から偲はむ
道すがらまた道奥の陽に向かひ 月日数ゑつ歌を詠みつゝ
言ノ葉に四じを歌ひて又年の 今し言ノ風吹きて嬉しき
始まりの言ノ風綴る譜三つ 答に蝕真珠星なり
木枯らしに祓ひ果てゝや浮寝鳥 施ば手枕とさ寝しさ寝てば
さ蓆に衣片敷き宿借りと こひ転びつゝ長き此の夜を
薄赤き或る夜の壁を灯す火に 偲びて浮かふ荏柄の梅を
来ぬ明日の降るか晴れるも何処知らず 月ノ桂に夜半の斑雲
朝明けて空し鈍ては山沈み 凍り観るもの尚寒し寒し
新瑞の往き来の道は白雪の 今年の今日も又の又哉
道奥の端山の影は凝しくも 雲の跡から白く連なる
定め無く空に往き交ふ叢雲に 幾度同じ虹を待つ覧
荒魂の森の奧處は神錆びて 木々は眠れり未だ先ノ春
ませばこそ日々の隈々仄々に 心芽出度き年と成りけれ
新年の慶び点す初め雪に 多磨の如しと靚けさ見入る
久方の吾妻の雪と思ひしな 折々触れる弱き程なり
吹く毎に輪と広こりし六つの花 面白き哉今日の初雪
風ともに霰も光り星々は ひらりひらりと輪に連なれり
うち日射す見が欲しからむ初雪は 音も知らなく風かも渡る
道中の笑ましゝからぬ初雪も 消なば消ぬがに雨な降りそね
初雪やゐたく降りせば色失くも 冬の始めと飽かましものを
初雪よゐたくな降りそ六つ花と 未だ見ぬ人へ散らまく惜しに
風寒み昼間晴れゆく一刹那 残る隈なき初めの雪影
吹き惑ふ空の粉雪きら星の 砂子と散りて輝き昇る
風に失すさやぎ殘して光りせば 見る人ごとに懸けて偲はめ
正月もや既に半ばに為りにけり 夢の如くに尽きにけらしも
藍を追う疾れ疾れや白馬よ 高く高くに嗎き給へ
鞭打ちし鐙を合はす烏羽瑩の 澄みし瞳の見目麗しき
言交はすた易しことは思はぬに 繧かぬ袂も行きて早見む
羽奏宣に耳疾き清ます花風唄に 揺れる游ぐは君ノ黒髪
八千種の砂畳みなす面影は 寄せては還す波を想はせ
青馬と風の我が身は浮き草の 忘る事無き彼ノ地の匂ひ
一色と春に緑む若草の 勢ひ萠ゆる野は蘇へり
ま遠くの雲居に見ゆるあの岬 君が手をふる疾れ我が駒
水鳥の鴨羽ノ色の青馬は 眼頭溢る来し方情
然る秋の撓む撓むる梢枝の実 愛し愛しき丹き花びら
峰々の剣貫く白雲は 月にも浮ふ満れる面輪に
青駒の足掻を早み岬にそ 君在さなくに何しか来けむ
悉く馬疲るゝにみかばねと 夜の明日依り始め時しを
久方の花風に偲べば手弱女の 馨り揺蕩ひ我が身忘るゝ
鴨ノ羽の限り無き馬又歩む 眼頭零る来し方心
夢出でし湖畔の烏滸の輩に ゐさや誘ふ我を夢路へ
散楽ひの振り子の仕草可笑しさに ゐつ言われてもいゝさ左様なら
草丘へ駆けて到りし黄昏に 朱馬なりて西へ着き臥す
陽ノ丘は傾きともに嗎きの 聲は悲歌りと終ひの瀬と為る
島伝ひ敏馬の聲は渚崎廻と 眠の寝らゑぬに涙ぐましも
丘一木夜に消へつゝ所縁なく 零る涙は河の滴と
上道を昇り詰めたる透き馬は 空が牧場の群れ野寮に
星為れば流れ流れて天乃馬 何時かの浦の岬巡れり
天馬よ疾れ疾れや白雲に 高く高くに嗎き給へ
烏羽瑩の澄みし瞳は麗しく 侮らはしき交はす言など
行くさにはみなと我が見し此の崎を 独り過ぐれば情哀しも
訳もなく涙よ泉心なる 水面に浮かふ宵の白馬
な思ひ人ゐつと知りてか結ぶ枝と また相逢はむま幸くあらば
汲む水の夏は冷たき冬汲めば 温けき哉泉懐かし
風吹けば茜も冴ゑて身も揺れて 黄昏れ色にふれ愛ほしむ
影映す泉は深く藍色の 汲みきそひつゝ綾の一輪と
肌に触る此の光りこそ星々の 彼方の生命俏し影やれ
天離るなほし空依り黄昏に 交へて火矢と銀雨を射る
さ丹頰ふ猶し吾妻は敷妙の 身は銀の風吹き曝す
降る雨に漸々染めし身ノ程は 流るゝ粒とともに在り去り
笹ヶ葉のさやぐ時雨れとなり濡れば 今鄙離るともの肌はも
斑気もの心を遣らむ方ぞ無き 得手に装ひ知らぬと惚ほる
忍れば言は渇かぬ涙なり 思ひ乱るも笑みて直すに
弦打ちて絶ゑず聲つき願ひたる てらさふ身なば振り落とさむと
知らぬ間に紅葉ち差し詰め散り急ぎて 意に添はぬ生命なりけり
密み居る目なの辺りは紅丹插し 痛く外吹く鵯の啼く
嘗て無き者と為り欲み祈りては 昔に優る海月乃なゝり
百重波荒ひ荒はれこと水母 影も色失し海となりせば
荒磯の千重波しきに粉々と ろんなくもとの処満ち出ず
思ひ遣る術のたづきも今は無く 久しき時ゆ生けらみ極む
夏麻引く生命傾け刈り薦の 息の緒にして泥みぞ夜を越す
宵ながら明けぬる空を渡り行く 遣ひの鳥へ行方問はさね
見ゑつらむ夢と知りせば未だ宵の 雲の何処に月宿る覧
朝露の日知りの色を如何にして 千々に染むらむ光り影とせ
割れ殻に懷はす瞳宿るてふ 不合ふ験と少し息みぬ
見て厭へ何か涙を恥もせむ 跡形も無く泣き腫らすやも

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