ML玉葉集 春部(睦月)


短歌ではなく、伝統的な「和歌」を詠むことを目指す和歌所の歌会、
そのご参加者様の詠歌をご披露させていただきます。
※2018年1月はおよそ210首の歌が詠まれました

ご参加者様のほとんどが、和歌所の歌会で初めて歌詠みとなられています。
それでも素晴らしい歌が詠めるのは、無意識にも私たち日本人に「日本美のあるべき姿」が宿っているからです。
歴史に培われた日本文化とは本当に偉大です。

私たちと一緒に和歌の詠歌、贈答、唱和をしてみたい方、ぜひ歌会にご参加ください。
歌会・和歌教室

あかねさすもゆと知りせば名残りなく 宵ばかりの空のけしきは
はろばろに汀に放つひかり矢は 月弓の調べ里に降り来る
風かりて降りそほちつつ黄葉の 月夜の煇よしにまちてぞ
はるけしなほのかにみえし秋天馬 まさごけちらしたつ夜の霞
そばたてつ音なふや無し宵闇の 音を譲りて星の瞬き
波はらふ天あまつはらすすみゆく いさなをつれつきほんのほしよ
照らす浜見えつる星哉幾ばくの 遥か彼方のいのちありやと
天海やさざめく浪のひかりばな 真砂の星の浜に座すは
やみすみし真砂の雫天空に すばるのたまにつづりたらしめ
うおにびや嵐に釣れて飛び跳ねつ 星浪白むほくらくしもん
小夜更けていやますますにたまかぎる 真さにこそほくしんのひよ
瀬戸の朝なみねささなり東雲の あまじあおぎてあさづつしらむ
有明けの海寄り吹きしときつかぜ 偲ぶ音吹きし君へ帰すと
きみしのびいやさまほしとうたつづり 細やかなれど一助なれば
薄浅き明けたる空に白き星 はかなげにみえ凛々しくもあり
霜月の毎夜現る星々の 光合ふたる濁りなき様
寒空に十二律の鐘の音 星玉響す釣鐘星夜
孟冬の天路に響く冬鼓 合戦するは源家と平家
真ほらしく星鏡たる源氏星 具して現る東の空に
けざやかな斎つの煌き平家星 意とかくしもや具し足らむとは
つれづれに海と戯る酒升星 香り仄かに通ひたりしかば
雪ともに星霜降りし浅き冬 咲く光里花暁とき前に
射干玉の闇も色つく鴨頭草に 月競ろふは大犬の星
みんなみの甍の上に玉響は 昴の真砂ほしき擅なり
愛しうす誓い連ねて二つ星 求めしほどに天の逍遥
いずくんぞ昨夜忘れがひ雪星や 風花なりて里に降り咲く
神さぶる雲そ棚引く富士影に をかし見ゆればゆめのまにまに
さだめなく進む海路知る辺なる おほき三角勇るなりとて
光陰の曉別つ空様に ひとよの巡りも仄か儚し
天野馬夜つゆも翔けらば山眠り 冬の星雲珠広み深け来ぬ
命なき星々こそは大和歌 ふればかくとも光り玉響
心こそ目に映らねど心あり 萬言ノ葉歌に栄せし
ときわなる宜し神代ゆ明けしは 天の川瀬や遺れ清水
願はくは暫し闇路に安らひて 星を奉りて君をとぞ思ふ
夜ひと世おもしろき星遥々と 浄き直きに君呼び響む
冬の日の 四方の嵐に 吹きよりて 交わす言葉や 三十一文字
名も問わず 淡き交じりに ありとても 伝う想いぞ 三十一文字
我が内の いにしえ訪ね 道迷い ただ頼まん 三十一文字
吹寄を鳴らし楽む秋なれど けふのはつ瀬に入相の鐘
玉かぎる日名残り淡し薄暮れの 影揺れ朧微かに見つゆ
神無月浮き草紅葉色節て 暮れの水面も括り染めたり
目も枯れずすさきたそがれ織り成すは 八重の潮路のちぐさなるいろ
しゅうりんやひまぜにしけて告げの朝 陽の葉隠れに見ぬ陽思はゆ
六浦のみちのべにあるさねがずら ひきいたるるにあかみきよらか
秋遠しははそのいろは薄けれど おいらかなりてつつましくもあり
ひらかたにいみじくなくは秋からす 秋も去り逝くすずろ哀しや
日の名残りみなとえのそら暮るるとも 路照らしあまの家々
おつともに夕まぐれなるきほんかな寄せ掛け助く夕波ともに
きたみうらうれいなぐさみおほわたゑ ぼしょうひびく秋の夕暮れ
あかねさす野島暮れ行くあきなごり うみかきのこしきもりならしめ
ようやくのあきすこやかなくれときの せとのちさとのわらふかげみゆ
こずみやうなみだふるゑのしずうらに そよぐ散り葉やもみじぶなかな
さめざめの秋雨晴れしとりやとべ ときかはさずの木枯らし前に
落葉のともにくちるや秋誘う きみしのぶひよいとど哀しき
しきふるははやるもみじや鐘の音に 走り火なりてちふる様なり
そろそろと紅葉去らむと秋を見て 思ひ和むやくれなずむころ
沈み行くあきのひらかた暫くも 染め出でたるは藤の紫
墨入れてよをとかしこみうちかわの 川面に映る月も染めやも
たそがれに黄昏に頻吹く風や袖渡り 瀬戸の鈴音もさやしかりけり
澄み渡るやすみれみずいろ紅葉織き 秋のひと時冬も間もなく
いまは未だ星亡き空を眺めつつ ふるひかりまつひとりみぎわに
一つ星二つ星とにいだしたり てるやひんがしこの凍ての冬
あかあかと空を遺して蝶分かる あとをやつして花散りしをる
昏れ別つ月はひがしに陽は西にてふつかふとき 宿る花なきあはれおくりす
人知れぬさらなるうちとよばひまふ さちのちぎりとひひる哀しも
木のもとにしばし宿りてもみちみて 秋のかほりやそこそこに散り
紅葉舞ふ夕紅のはなころも けざやかなりや眺めつる間に
霜月のいささ紅葉や吹く風の おとのかそけき秋の黄昏
長雨のすゑずゑよせの紅葉さえ 急ぎ散りだし秋を去りゆく
秋の瀬の荒れたる風にそぞろは あおりあおられほしほうじゃく
もみち葉の散りゆく様を眺めつつ 去りゆき人を思ひ偲ばぬ
とびまがふあきふゆまじり今更の 秋扇かな破れ芭蕉
何からまいりいずこへ去る風に 問うたところで風や吹き去る
ひさかたの富士の白峰眺めつつ 八重の浪しる秋ぞ去りゆく
もみちぎり消えて哀しきからす風 何時とはなしに秋はいぬめり
秋さらば変わる風色錫色の 木枯らし吹きしそろそろの冬
果てぬればをさをさ枯れて呂色山 姿現はす冬始めなり
冬知らすかりやすうたふかわらひわ 紅葉にかわり冬木賑わす
小春日のかりやすほのか陽だまりに 刹那のうちに花返り咲く
まうとうの寒々しさにも陰映えす 言少ななる石蕗の花こそ
うちそよくおとはかそけきささらごの 北風梳かすゆつつ爪櫛
ものきよげな名残の月やいとあやし 秋の香木もけはひ香ばしふ
月集め参り集いてやまとうた 折節を詠む千歳の歌を
いにしへの心の種は東より 歌なりはじめこと新しく
まれにあふ大和の心風渡る まどりつどいてつむぐことのは
ひさかたの響く歌声東より くもでにわたりさくやことのは
思ひやりはねやのうちに雲去りて 夜明け間もなく来る朝陽とも
逢わぬ夜のしきふるあめやにわたずみ このみながさるとてもの事に
つれづれに風は舟とも海にいで ほしきままなりきたさいはてに
三千年も続くと祈る戯れは 幾世の友と詠める喜び
いまはなる命ふたふりいひにきす 年越ゆべしやはるのみなくち
みちとせのはなしもてるや大和美と しもとがちなるかをるはももえ
ぬばための旗めく揚羽いてやみに くほんひかるはたいらうじほし
白雲よやまはにかかる富士を美て うまのはなむけ鳥立野辺に
みちとせにゆかむやまとをいただきて 謂はれしこの実にうたふことほぎ
心おく紅らむもみつ一色も 名残りかき捨て向かふ年の瀬
やうさむにしるく見ゆるはかがりびばな すきかげともすふゆひるつかた
暮れ易しいろよきままの朽葉には 届かぬ霜も静かなりけり
かりそめのむしりたがりし冬風も 消えがてにする出づる日の色
冬雁夜泣きて入まぬつゆしもの けやすきことの味気なきこと
冬立て深き夜の月そらさまに うちこうこうとさせる庵そ
日を消うし泣きて入まぬ冬雁夜 結ぼほれつつ霜の籬に
冬うららこずえわびつつ柿落ち葉 あまねくふくはもがりふえかな
夜半の冬降りみ降らずみさだめなき 朴葉に落つるおとやかそけき
うちなびくあたらよかぜに咲き匂ふ 懇ごろにひかるしもはな
秋冬のからすわびしさみなしふす ものしたあふやうしんこそゑふ
ふりゆきて結びし紐を解きあらた たまゆるかぜのおとすがたみゆ
朝比奈に手向け善くすはうずさくら なまじ知らさる冬の憐れよ
ぬためつくふるえおりはふさわ鹿の 角おりたまふさきかはすをだに
くれまつじ百花先とす先染めの うめはほのかにもだしてたてぬ
あまとぶや鏑の様にもがりなく おうぎのいちだくれに早き散る
天飛ぶ矢梓の弓のおとすなり 朝羽振る陽のはだれかたさる
哀れなるまつ身時しも凪てこそ こころあらはすいてみずのあや
とりらくや入り綾ならむ泡沫の さくやちるかはありのまにまに
なきまさるせきばくたりや寒凪に 千鳥誦ずとも泡沫に消ゆ
ささらきゆ冬の凪こそあはれなり 風立ち浪み寝凍の小余綾
枯れ果てに冬惑いしも明けばまた 鳴きぬるものかしかなきのくさ
あかあかと空を遺して蝶分かる あとをやつして散りしをる
昏れ別つ月は東に陽は西に てふつかふとき憐れ送りす
人知れぬさならぬうちによばひまふ さちのちぎりとひひる哀しも
今離るいのちふたふりいひにきす 年越ゆべしやはるのみなくち
あらせうし朝夕迫る年の内 いそぎすすはき時行き交う行き
冬月夜心もしのに年惜しむ 遣らずの雨もかげにかたさる
瀬を早み渡る年越そ身を尽くし) さしもあしふみ逢はむとぞ思ふ
ひと年を一流ひたたき果ての月 憂い慰むこの明け暮れを
ふねはてて舵振り立てて瀬の汀 君贈り給ふわかれのみくし
去る酉に涙の玉をたむけひつ うたよみずいろとしよふけゆく
いにしえの奇しき縁しに集えるは げにやめずらし優曇華の花
供養とて寺訪なえば一山に 薫香漂い花の満ちたる
亡き人に贈る五色の花の意は あずかる慈悲のしるしなりけり
迢空の案ぜし歌の寂滅も 舫(もや)ふ連歌に息の緒かへす
いにしへの代々のたねは(種葉)をあつめおき 喚子つどえし窓の内だに
いにしへを仰ぎて時を得たらむと 片糸よりてつなぐことのは
思ひのこす影も浮かばずつつがなく 茅の輪をくぐりタブララサなる
海見むと堤登れば青き空 いずれ変わらず舞うや浜鳥
空もまたうみもかはらずいろたたへ かねのくるはにいこふうみとり
浦に出づ砂上の城にも年いわう 松をゆらすは八重の潮かぜ
あらたまの年のはじめの望月に  導かるらむ安芸の宮島 
初春の陽の出ずる波の静けさに 心新たむ 安芸の宮島
冬うらら今日は初子の若菜摘み 小松も引きぬゐぬやことほく
びよびよと来鳴き響もしあらたまに しんしのゐぬこ額手を当つ
獅子踊り冬に春撒く事初め 八重の花笑みなほめでたきや
さくたんにゆき夜渡りて麦出る いと心深き青み足るやうに
朝に日にまた一渡瀬を歩みつつ わすれきよみずしあるきけるを
あさはふるあまさくたんに白鷺の 舞い散り降るる富士の風花
さくたんのめしかえすひよほのぼのに 若芽靭のけやけきいのち
空様に白きを見ればかささぎや 里の花笑みすなわちさかゆ
しろたえの風の扇にうち靡く まうゆきころもさちおおかれと
天霧らひ降り来る雪の千歳歌 大和の里もきよみはなやぐ
ひさかたの天伝ひ来る雪霜の 聞こえ振り積む君の歌声
さる晴れの寒の凍凪 ふじやすく かんばせよそほふ言ふ由無しと
六浦にとこよべのさまいや照りぬ 大和橘始じめて黄ばむ
あな嬉し寒さ忘れつ見合ひたり 春の設けの福良雀や
白枝につぶと添ひ居て傍もとに ふくらのすずめいとら愛たしや
寒すずめ気を催してふくらかに 待つや明時春隣かな
風渡り籬下り居てべにひわや 花はなくとも鳴くや初花
種々の日並み明け暮れ時じくも なほし見がほし里の花笑み
ひうひうときに音勝つ もがりぶえ かぜおろしさま祈り来にけり
福々しあららくはつね里跳ねる やほへしげゆきとしあらたまる
生しくも仏果具為にすべからく 一切衆生なる悉有仏性
萌える夏枯れの草秘めし芽を そぞろさむしもひあしはるべに
なぐあひに松香も満ちてかたなくも いてうらつたふうちしめやかに
あさつかたなほ冴え還り冬襲 あさなかつぎの海の花彩
冬凪に朝惑いしも明けばまた 越ゆべき浪の果てや春紅
荒磯の吹寄せ鳴らす北風も 何処行くらむはるべみなとに
冬原野寒さ未だそこ風白し たうまちくゐやわのしきのくさ
山清水温かふくむ春野辺に 凍ての泉もわななきすみゆ
みちとせの花下照やや大和美と しもとがちなる薫るは桃枝
懐かしきあの娘ことを思川 流してみるは忘草かな
遠近の鐘の音待つは年の暮れ 庭に出れば初雪降れる
金澤のハつの島にも新たまや いてはるなみのあかねしほじむ
雪の原春の曙輝けば 光背にして舞鶴おりる
きたくにに汐満ち来れば新たしき いやしけ吉事さはにたづなく
渡の辺に鶴の毛衣うちなびく しまのせんさい和歌の前舞ふ
にげみずのたづのこまつりふゆでんぽ 国見し給ふおほみうたかな
千歳より大和に住める動物(うごきもの) 池水抜いていざや守らむ
清らかな西のお国の薄雪草 マリアと私お気に入りかな
春山に標とするは常盤なる 薫りも高きむめの花なり
万歳にかたじけなくもありがたく 翁面の神さびてある
金澤や八津の島々とりよろふ さとけぶりたちおきつとりなく
夕映えに照らせば輝る八景島 とばりおりかけ今日も暮れ行く
六浦やとよはたのくも入り日挿し 八潮も染めぬうましさとにて
敷島のかみのよりしろうちわなる ことだまのうたおもりくわいにや
翁さぶいでやたけなることのたま 浦うち扇ぎつつめいどうす
翁蒔く正月の花さきはゐの さくやもちつき益々白す
平成の数寄者集いし和歌所 紫史と菅家の詩歌よまふぞ
神通るいささ群竹報國寺 音なき音や風なり興す
天津風たけおいたかう報國の みちあけはべるかみのおわたり
鎌倉にうめしりんこのしろいちだ 五山の古刹浄妙寺
東風吹かばいちとしさくや空蒼し 荏柄の飛梅薄紅や挿す
歳寒の三友揃ひ縁起なる つねはみどりの春告ぐむめよ
三笠ねの此のも彼のもに影あれど 君の御影に優るかげなし
あらたまにさやにもみしか九重 君が御影の思ほゆるかな
せちごちや羽根風あおぎまつのなみ はるやここのゑかりゆしあそふ
幼子の菓の実いただく笑顔から 世々の民らの平安知るる
一二三(うたたね)し夢に出るは子規 春を告げても悲しかりけり
上野にも玉を遊べる野のありて 正におかしき寺のあらたま
いわくらに心心に群千鳥 絶たぬなりけれころからころく
言ノ葉や知る人ぞ知る敷島の 四時を経つつもときわいろはゆ
たまよろふうゑのとかげのいわくらに 千種歌詠み神し知らさむ
難波より帰る都はしろがねに 雪踏みならし家路いそぐも
雪乱しふためきあへる人浪に いとかくばかり思はざりしか
しろかねやすずなりのまひさえとよむ 風流樂しみ家路忘るる
四方より吹き乱がはし六花の おとかもかすみよいもしらじむ
とり分くる赤かし望月待ちわびる 今日は江戸にと思いぞ馳せふ
うばたまの見しやまどかな望月の まれなるかげとかくるものとは
望月の凍てつく夜にわらべうた 心和ませ酒かたむける
伝へ聴く江戸の望月いにしえの あかしろさえし尚凍るらむ
ひさかたのきわやかなりしきみつきの 何時ともわかぬ友垣の歌詠
おも白き出でたる月夜あかなくに こほりこめすうさてもやかげを
ひかりいる軒の垂氷やじんざもみ もにすむ夜の影も凍りて
更ける夜のわらべのうたに聞き耽けし 寒ゆる月影袖に残して
深き夜のあやしつきそな冴え渡る さすがくまなくさくやしもはな

和歌の型(基礎)を学び、詠んでみよう!

代表的な古典作品に学び、一人ひとりが伝統的「和歌」を詠めるようになることを目標とした「歌塾」開催中!

季刊誌「和歌文芸」
令和六年冬号(Amazonにて販売中)