ML玉葉集 秋部(長月)


平成和歌所では京極派歌風を理想とし、日本文化が大好きなメンバー同士で和歌を詠みあっています。
私たちと一緒に古典和歌の詠歌、贈答、唱和をしてみたい方、ぜひ歌会にご参加ください。

歌会・和歌教室

雨上がり彼岸詣での童べの はろふ小路の野菊を手向け
秋の夜の半ばの月の影もなほ あらはれわたる光待ちつつ
客人も感じ入りたり虫の聲 秋の名月米屋のおかみ
ひさかたの雲のとばりも隠しあへず 秋の面影しくものぞなき
菊の花こめし枕にうつし世を わすれ眠らむあさく恋はねば
見上ぐれば涼風至る時も過ぎ 草葉の白露置くや月影
なにし負はば秋夜にうかぶ空鏡 影を浮かべむ彼の地の人を
夕暮れの秋風ゆれてうたたねの 夢のなかにも虫の声かな
ゆふばへのやみにとめおくひとひらの みずをとどめぬあさのまよつき
菊の月風吹きつく秋空に 貫き留めぬ玉ぞ散るかは
うたた寝の耳に残れる虫の音 絶ゆるとき待つ長月の宵
菊の香にのせるを待ちて朝露の 今は消ぬべき秋の訪れ
松虫のたへぬこえするくさむらへ 魂は往にけりひとを兼ねつつ
群雲の絶え絶え間に星見えて 月のいるさを光いざなふ
さし込める籬の風の冷えさびて 霜の白菊月やどるらし
返り路にひとり聴く夜の虫のこえ 過ぎぬ暑さは年のおかしき
暮れ果ててさりとてやまぬひぐらしの 虚しき空は星の夕暮れ
あしひきの秋月濡らす宵なれど 山末影にうぐひす鳴きぬ
人もなき秋空近き頂きに 野菊とせり蹴鞠の
野分跡たかく澄みたる雲の鱗(うろ)に みだれしこころ秘そめおかばや
大鳥居茅葺の破れひとは守り 宇治上神社の息蘇れ
有珠山の跳び箱ひよいと湖(うみ)の島
浴衣干す軒に秋告げつばくろは 美ら海恋ひて空わたるかな
雲間より澄める光のあらはれて 跡なき水に満ちる月影
名にし負わば秋夜に浮かぶ空鏡 影を浮かべむ彼の地の人を
うたた寝の耳に残れる虫の音(こえ) 絶ゆるとき待つ長月の宵
何処にか心波たつ海あれと 真黒の空にはなつ言の葉
秋風に流る雲かと見紛うや 春日を求む燕(つばくろ)の群れ
露の玉ふくむ衣をともがけて 菊をながめむ千歳を越えて
日の光含み降りける雨なれば 地の葉を染むる赤に黄色に
夏雲のゆくへはしらず大風の 吹き散らしたるにやあらむや
大刷毛で払へどもなほ滲み雲夏の ゆくへをそこと知るべく
武蔵野の埜邉吹く風の來し方を 羨ましくも見やる秋哉
彼の地には己が身は祈るばかりにて くやしき人々いかにおほからむ
煙草屋の軒先掃いてつむじ 風まろぶ子犬と駈けてゆくかな
あしひきの山くづれにけり古里の 母はいますか父はいますか
泥掻きてなほ泥かきてめこの名を 呼べど叫べど物言はぬ山
山津波恋しき人を飲みければ 朱の両手も死ににけり
人の世は苦しきものと知りながら など釈尊よ人は生きるか
昔聴く六位の咲かす蓮華花 泥噛む人に手向けせんがな
涙川音もなき闇に泥かきて よぶ人の名につのるかなしみ
クレシェンドディクレシェンド秋の夜は 人の心を映しみるかな
超光速巨人の茶会いづこやら 半歩違へて百萬年
君の歌たれうけとめん幾光年 隔てどいつかはクロッシング
小さくもなほ小さくも分け入りて 宇宙の創生思ふ夕餉や
何処にか心波たつ海あれと 真黒の空にはなつ言の葉  
天震え心は凪ぬわたつうみ 汀に映る星の囁き
雨上がり彼岸詣のわらはべのまろぶ小径に野菊を手向け
濡れ落葉水漬く小径に 影もなし黄昏時の雨そ佗しき
濡れ落葉寄り添ふかたのありてこそ けふのゆくへは人のまにまに
満ちぬれど雲居にかかる月影や 今宵は萩に宿りせるかな
風やみぬ北窓に寄らば白秋の 音連れ知りぬ萩の玉梓
山里に降る雨おほくまさりなん 濁れる水の叩く船端
薄陽射し青さ増したる秋草に こぼれ咲きたる白萩の花
花もなき野辺の秋艸薄曇り 風も幽かに青の閑けさ
風吹けば青を争ふ秋草に いま一入の静けさまさらん
君なくてあしかりけりと思ふにも いとゞ難波のうらはすみうき
あしからじよからんとてぞ別れにし なにか難波の浦は住み憂き
不知火のつくしにひとつまたひとつ 安らかなれと天のおもひか
赤き蕊けして出会えぬ葉を思ひ 天への願い冠となる
白萩の色こそみえね雨露は 袖うちふれぬ心知りきや
見上ぐればみかづきなりや秋の月 1秒前の月影や
大きくもなお大きくも膨らみて 尋ねあてたる量子なりける
さすあかりなくて紅葉のいかに染む 秋のながめの鬱しと想えば
みやびかなおちこちさけるあきのはな いかによめるやむらさきしきぶ
ひさかたの月灯りに夢かさねたも 昨日は満月今日は十六夜
紫陽花は雨に打たれて秋を咲く 紫色の佇む人か
鳴り響く社の午後のきりぎりす 無常の鈴いま響きけれ
髪乱す季節の風は何処へゆく 我に知らせよ行きてとどめん
大きなる野分け立ちては長月に 夏も残さぬ急の秋なる
雨はれぬ釣瓶を落とす帰り路の 敲く礫に驚かれぬる
未だ晴れぬ朝けの空も見し秋の 面影ながらうち曇りける
動もせば青葉に濡ほつ茜色 秋も晴れせぬ峯の墨雲
秋山や波よる風に節ゐろふ 濡れにぞ濡れし色をのずから
詠月に浮き世を廻る水車 消へゆく雲は秋のちぎりか
滾つ瀬にすゝし競ひて弓ノ結 勇き稽古を為るがへぞ行く
長月も七日は過ぎじ道奥の 風にな散らし初雁の聲
帰るべく時はなりけり夕暮れに 鴉鳴く頃なほ聞こゑけれ
また秋の釣瓶落としに帰りしは 同じ枕の覚月夜に
明ぬけに夥しくもなゐ震るゝ ゐとどまた繰る残す傷とは
ゆきやらに大なゐ震るは暁時の 晴れゆく痕の今朝ぞ悲しき
誰そ彼にのばす影とも何処方に 心は秋に寄りにしものを
遠島の秋の半ばの俳優に 憂き瀬を余所に思ひこそやれ
徒らに色を喪ふ寂しさの 限りとぞみる何と憂き世を
葉の繁る現の憂さの数ならば 紅葉せずとも今日散らし給へ
晴れゆけば夏の蟲色秋空は 変はる変はるも後偲べやと
下草の鳴く聲幽か錫ノ蟲 のち偲べやと留めおきけむ
別れてのあと偲べとや行く秋の 日数に雨の歎きあれやも
今日もまた暮れを迎へて明日を見つ 漕ぎ行く舟の跡の白波
山里の暮れぬる空も煙りゆく 聞きすてがたき入相の鐘
色映す煙の上を雁のゆく 茜もにほふ暮れの秋空
山寺の入相の聲今日も暮る 道に忘れぬ昔ならでは
鳴く雁の遠ざかりつゝ鐘の音も 霞むにつけて影ぞ消ゑゆく
帰り路の木の下暗くなりゆかば 吾妻の月を恋ひざらめやは
また年の刈り穂の後の秋野辺に 初霜降りて冬隣かな
長月の同じ雲井に染めかねて 只こごしくは山も淋しき
此の秋の色はと問はば降るからに 時雨る景色に面やは見ゑむ
数へねど淋しく時雨る此の頃は 秋の様などをぼめかしきに
足挽きの秋月濡らす今日なれど 山末影に茅蜩鳴きぬ
かにかくに物は思はじ秋梅雨の 此の身一つの音の間に間に
秋風の吹く夕暮れの蟲の音に 忍ぶる笛も誘はれつゝ
可笑しくも時雨色付く秋山は 盛り間も無く紅葉するかな
吾のゆく越しの秋山知らねとも 紅葉隨あとを訪ねむ
秋辻のひと一人ゆく野を遠み 昔忘れし人や恋ひしき
打ち付けに秋雨濡つ此の頃も 流れて色は紅葉するかも
風止みて浮きたる雲の御九日に 紅葉する日の近む秋暮る
叢雨や長月十日降りそむる 秋の半ばを空に知るかな
浅りせし水のみ錆びに閉じられて 浮き葉浸きても色は変はらず
宵闇に十夜の月欠け愛しきやし 影や目すらを欲りて嘆くも
月影や今にた弱まし可笑しきは 十夜に余れる五日なれども
慎ましき小さやかなる秋ノ月 影も目離れず相見しめとそ
空に見ゆ仄薄曇る宵待ちに 色取り月は半ばなりけり
清かなる秋の風吹く思ふ末 一夜一夜に月の澄めれば
一夜また一夜と月は澄めれども 秋の風吹く末を思ふは
月欠けてまた月滿ちてまた欠けて 滿を還して一昔なる
葉月より空は高くに澄み透て 委曲委曲に秋を定めぬ
秋染めし初の紅葉葉遠近に 分け越し山の日向日陰に
茜さす見飽かぬ山も後れてや 赤にほやかに寂つゝ居らむ
尋ねばや知らぬ雲居を眺め侘び 秋の月日ぞ経ち累ねぬる
隠りくに光る筋々立ち昇り 雲の旗手は時分け徴す
秋風の雲吹き祓ふ高嶺より 真澄み鑑は暮るゝ待ちけり
昔見し秋の紅葉は竜田川 時分の花は宵の月栄ゑ
風越しに吾が行く秋の階は 峰の続きの夢の曲なる
朝夕と山は宜しき赤香に 仄か紅葉は道奥に咲く
斎き夜の高嶺の雲も月を待つ 心居るべき秋よ磯城嶋
月秋と掛かる歩きに空ながら 凄き様なり驚かれぬる
嬉しとも秋をかぎりの名月に 驚かされて驚かすかな
霞たち且つ流れ行く雲間より 今宵の月ぞ名におへりける
月末の峰の高根に点す灯は 雲の絶え間の星かとぞ見ゆ
うちつけにまた来む雨か今宵まで 月ゆゑ惜しくなる夜長かな
空に見つ円居の月の満ち欠けに 色も虚ろな秋を知るかな
ひきかへて月見る夜はひと時の 時雨れ時雨るは煩はしけれ
時雨ては心の中に顕はさむ 明かで闇ぬる月の光を
何処方に紅葉せむかと思ふより 四もの山辺に散るゝ秋雨
紅葉する何時ぞ今かと待つなへに 色はと問はむ欲りし雨なれ
朝夕に紅葉待つとも思ひ寝の 夢の内にぞ咲き始めける
白月の影や降り来ぬかくしあらば 言挙げせずも秋や栄ゑむ
思ゐきや潮の八百逢ふ沖津風は 吹きにけらしな然こそ労はし
然てもまた雲の流るゝ海津道に 幾瀬に掛かる秋ノ白浪
沖津瀬に斯く立つ浪は鋭き冴ゑて こごしき磐の哭には泣くとも
大風に雨も白じく寒空は 糸も掬ばず貫き乱るゝ
颱風や逃らかさでも立つ様に 我も憂きたる秋過ぐしつゝ
玄ノ月同じ空こそ唐土も 激つ嵐や堰きぞかねつる
東方未だ晴れやらぬ雲間より おなじ空とも見へぬ青かな
葉にうつる雨音のみかは露の鳴る 晴れゆく後今に名残り慕ひて
時しもあれ秋道奥に来てみれば 山ぞ色濃きなりにけるかな
時しあれば知られぬ谷の深山木も 秋の色へと現れにけり
奥山の紅葉眺むる風花に 秋も溜まらぬ時分けを知る
時分けの降りみ降らずみ定めなき 時雨ぞ冬の始めなりける
帰り来て軒端を照らす月影の 光りも香る金木犀か
秋の夜の吹き舞ふ風のうつり香に 盪めくほどの心地こそすれ
我が庭の橙の花惚れ惚れと 香り変はらじ色づきにけり
吹く風の誘う香りを導べにて 行方定まる秋の頃かな
夕されば苔の朱きに鳥降りて 静かになりぬ今日の秋風
手に掬ぶ水は涼しく長月の なほし涼しき風に驚く
いつみきかいつみきとてか冷泉に 月の弓舟浮かべて遊ふ
暁の夢に見ゑつゝ余の月は 昔見しかな朝を征く舟
長き夜も仄めく遠の時分けに 星の影さへ半ば醒めゆく
秋ならで逢ふことかたき名月の 光り流るゝ天の川原に
悪戯に今日は暮れやむかくてのみ やむべきものか秋の名月
霞たつ且つ流れ行く雲間より 今宵の月ぞ名におへりける
今過ぎし吹かれてぞ行く風の端に 二夜の月も一夜なりける
窓に漏る月影辷る白さやの 清しき風に半ば醒めゆく
軒白き月の光は音なくに 秋の空間はかごやかなりや
菊月や蔭も障らず煌々と 草子を照らす白ぐ光りは
深々と秋の広ごる此の宿で 今書きつくる玉響の詠
つくづくと宵に歌詠む幸わゐを 小々やかなれど秋と感ける
大きなる野分け立ちては長月の 夏も残らぬ急の秋なる
道奥に大ぬす野分け吹きすさぶ 吾妻へ方の降らまく後に
中々に風の押すにぞ乱れける 雨に濡れたる草の絮ふく
幾度の野分け理る九月の 夏の最期の御山洗いか
晴れは未だ朝けの空も見し秋の 面影ながらうち曇りける
動もせば青葉に濡ほつ紛ふ色 秋も晴れせぬ峯の白雲
秋山や波よる風に節ゐろふ 濡れにぞ濡れし色自ずから
猶予ひに風の矢合はせ玄鳥去る 待つにより聞く初雁の聲
野分け過ぐ見やる沢の面水色は 遙けき空に続きたりけり
分け越して秋の葉向けもそろそろに 又のつとめて日を暮らさまし
歌詠もわからず尋ぬ道奥の 愛し山河もひと昔なる
野辺ゆきて何につけてか歌詠めば 無き心にも心感けぬ
道草に花唄程度誦す内に 四季は巡りて秋の風越す
ゆくりなく西風吹き離る一枚は 桐の葉の舞ふ長月の空
また秋の釣瓶落としに還りしは 同じ枕の覚月夜に
徒らに色を喪ふ寂しさの 限りとぞみる遠島翳む
明ぬとも夥しくなゐ震るゝ ゐとどまた繰る残す影なる
ゆきやらに大なゐ震るは暁月の 晴れゆく痕の今朝ぞ淋しき
今日もまた暮れを迎へて明日を見し 漕ぎ行く舟の跡の白波
青々や青々青や青々や 青々青や青々か山
青々や青々青や青々や 青々青や青々の空
時じくも綿柎開く頃 時ぞとも無く夏の日の間々
温々や温々温や温々や 温々温や温々な風
雨まさる熱せば返す夕立の 憂きに留まりて水浸く儘なる
探るは夕暮れ何処暗かりし 更くる此の夜は翌の秋なれ
暑々や暑々暑や暑々や 暑々暑や暑々の秋
常夏の風をのみ見て誰そ彼は 見ること難き末の夕凪
熱々や熱々熱や熱々や 熱々熱や熱々や暮る
怪しくも例え非ずや此ノ年の 天地始めて粛し不成や
ほどなくに朝を焼く陽は長月の 初めのひと日を括る乾色
此れや此の涼しき風を友とする 秋を慕ひて唄ふ錫蟲
朔日に更け靚まりて夜もの空 ただ朧なる薄雲を見ゆ
夏啜り暮れを駈けじのまた暴風 紅く萎みて渇きゆく野に
荒ましき剥げたる夏よ暫し待て 山も火の点く片や夕暮れ
今日もまた詠書き付けつ日暮らしの 菊乃咲く月二百二十日目は
去年契る菊乃咲く月歌初めの 一年詠ふ残んの鳥渡
幼き頃の小さし思ひ事 風の音色は満つ心地して
夕暮れに紅を帯び来ぬ花野風 緩きも冴やの風の末なる
今沢の知られぬ清水御手洗は 靡かぬ色の更科の透き
高嶺なる小丘が上に雲だにも 九重積もれる菊の白雪
我が庭に問ふとはなしに秋の来て 風は清しく青紅葉かな
朝風に在りと知らせる帽子花 風に乱るゝ花弁二枚
夏過ぎて幾かもあらね暑き日に 搔い潜みつゝ碧蝉花咲く
朝に咲き昼を遊びて夕休く 花の萼に潜まりにけり
ゐと逸も萎る青花魂離る 風あらばとも思ひけるをば
道の端の知られぬ色は藍乃花 夏も余りて縹草かな
風通ふ寝覚めの袖にうつりしは あかぬ夏色鴨頭草の青
青北風に心許なふ付きためれ 藍ノ花吹くにほひをかしき
秋近しみ空までとや蛍草 沢べの水に影のみだるゝ
待つとせし風は凪まゝ棲める朝 縹乃花の玉露の月
あらざらむのち偲べとや露草を 虚ろはぬ間に留め置きけむ
厭ひつゝ残りの夏よ移草 風に誂ひ秋を迎ゑん
月影も変わる色なる月草は 風に靡きて明日の秋咲く
神掛けて誰も誰もが見ず知らに 累ね続けむ過ぎし詐り
一羽墜つ冥き通ひ路足手影 恰も似るか轡に踠く
遠き空夕陽の跡の端切れ雲 ゆくとも見ゑぬ鳥の一連
幼き小々の願ひは羽広げ 白浪に乗り秋の峰ゆく
暮れ逢へず今さし昇る白月は 彼方に高く水浸く翼は
影のなき空の世界や如何ばかり 飛べぬ鳥には其の物とも無し
闇に見る水面に映る黒ゐ鳥 戸惑ひ累ね朝を探る
暗闇に羽切る風に爆ず水の多磨 水鶏は敲く心細さを
遠き聴く秋の所縁の朝紅葉 朱き空より君が袖振る
返す陽に灼岩黙す昼間とも 浪の夜こそなほ静かなれ
朧ろげな弓張りの月夢にだに 夏を偲びて欠きて見ればや
此の月よ著しくたつも夏残り 少し欠けても影の掛かるに
吹く風の山も無きまで昇りては 雲井に高き白菊の月
おほみ月晴れたる空は色濃くて 見ること安き光放たむ
雲のうち月は有りとも告げなくに 先ず知るものは秋の初風
あはれにも吹くとしもなき窓に来て 面影霞む此れ削げの月
入るさ月水鶏の敲く沢に立つ 秋をにほにて降りる山風
今過ぎし吹かれてぞ行く風の端に 二夜の月も