月照寺:意宇郡 - 出雲荒都歌その4

みれどあかぬ露の置き添ふあぢさゐの四片くまなく月ぞ照りける
音に聞く月の御寺の大亀はげにぞかしこき姿なりける

詠み人 圓学

松江市に所在する月照寺は、松江藩主・松平氏の菩提寺として知られる、由緒ある名刹である。もとは禅宗の寺院であったが、寛文四年(1664年)、松江藩の初代藩主直政公が、母・月照院殿の霊牌を安置するため再興したのが始まりであるという。ということで、当然『出雲国風土記』にはその名は見えないが、その歴史的価値と美観に鑑み、荒都歌の対象として取り上げるにふさわしい寺社であると考えた。

境内には藩主の石廟をはじめ、多数の石灯籠や記念碑が整然と並び、往時の藩主家の威容と信仰の深さを今に伝えている。また、境内には初夏になると数千株におよぶ紫陽花が咲き誇り、別名「山陰のあじさい寺」としても広く知られる。

さらには、かの小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が、随筆『知られぬ日本の面影』の中で紹介した石造の「大亀」が鎮座しており、これには夜な夜な人を食うという恐ろしい伝説もあるが、実のところは不昧公が父の長寿を願って建立したもので、その頭をなでると長生きできると言われている。

月照寺は歴史的・文化的価値に富み、今後も永くその尊厳を保ち続けるであろう。

(書き手:内田圓学)

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