加茂岩倉遺跡:大原郡 - 出雲荒都歌その3

神奈備の加茂の磐座(いはくら)風吹けば今も鐘の音きくここちする
ふる言のしるしなるらむ磐座(いはくら)のうちに埋もれし鐘をし見れば

詠み人 圓学

加茂岩倉遺跡は、島根県雲南市加茂町岩倉に位置する弥生時代中期の遺跡である。1996年、農道の拡張工事中に偶然発見され、発掘調査によって39個の銅鐸が出土した。この出土数は、銅鐸発見例としては全国最多である。

銅鐸が出土したのは、人家のある集落からやや離れた山の斜面であり、現地へ行くのは少々汗をかく。銅鐸は比較的整った状態で埋納されており、いくつかは類似した形状や文様をもっていた。これらのことから、当時の社会における銅鐸の用途や位置づけについて、祭祀的な意義をもっていた可能性が指摘されている。

この地域については、奈良時代に編纂された『出雲国風土記』の「大原郡-郷」の項に以下のような記述がある。

「古老の伝えていはく、天の下所造りしし大神の御財を積み置きたまひし処なり。即ち神財の郷といふべきを、今の人なお誤りて、神原の郷といふのみ」

この地からの銅鐸出土は、まさに伝承の内容と一致するものである。風土記はもちろん、記紀をはじめとする古代の文献には、根拠のある伝承が語られていると考えられる。出雲神話は、単なる空想や作り話ではないのだ。

(書き手:内田圓学)

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