雨世に寄す(令和二年七月十五日)

新暦文月の五月雨いまだ降りやまず、二十日ばかりも過ぎぬべし。余が住まふ下総が習志野はしとしとと優しき雨なれど、肥後豊後に降るはすさまじく球磨川町を飲みて人命多く奪ひけり。しかのみにあらず昨日は余が故郷出雲が近き石見の江川も決壊したと聞きて、もはやいずくにぞ人の安らかに住まうところのあるべきや。

思へば被害甚大の去年の房総、千曲川、激しき雨にて人々畏怖せしめて変わる月は七つばかりにすぎず、八大龍王への請願虚しく、今年も豪雨ぞ悲劇の傷列島に残さむとす。

かかる因果は世にいふ温暖化とすればいかがせむ。己のみをよしとする大国ありぬればパリの契りむなしく、世をたひらげる一筋の光明も消えぬべし。恥ずべきかな。今の世は宿世の理さへ絶えぬれば、現世のみよしとしてほかは知らぬ顔の輩定めて多かりけり。己が来世に子々孫々の豊かなること、これぞ今の人の留めるべきよしにあらざらんや。

あらためて知る、この世は草木一切に仏性あるを。

「己のみよかれとおもふ人にこそ心の雨はふりぞまされる」

(書き手:和歌DJうっちー)

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