2026年9月5日(土)・6日(日)、第5回研究会 「世界の中の和歌―多言語翻訳を通して見る日本文化の受容と変容―」 が開催されます。
和歌といえば、日本語だからこそ味わえる文学――そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。
では、一首の和歌を英語や中国語、フランス語、韓国語、ロシア語など、まったく異なる言語へ移したとき、その美しさはどのように伝わるのでしょうか。
三十一音という短い詩形、掛詞や余情、季節感、日本独特の自然観。
それらを別の言語で表そうとすると、そこには単なる「言葉の置き換え」では済まない問題が現れてきます。
今回の研究会では、一首の和歌を世界各国の言語で読み比べるという、とても興味深い試みが行われます。
14の言語になった「越の白山」の歌
1日目の9月5日に取り上げられるのは、『拾遺和歌集』に収められた壬生忠見の一首です。
年ふればこしのしら山おいにけり
おほくの冬のゆきつもりつつ
研究会の開催地・石川県小松市とも縁の深い「越の白山」を詠んだ歌です。
この一首を、韓国語、中国語、タイ語、ジョージア語、トルコ語、ハンガリー語、セルビア語、チェコ語、ポーランド語、ロシア語、フランス語、英語、ドイツ語、イタリア語の14言語に翻訳。
これまで外国語訳がほとんどない歌だからこそ、それぞれの翻訳者が「和歌の何を残し、何を別の表現へ置き換えるのか」が見どころとなります。
同じ一首から、14通りの「和歌」が生まれる――。
日本語だけで和歌を読んでいると、なかなか気づくことのできない和歌の特徴も、異なる言語と比較することで浮かび上がってくるでしょう。
『古今和歌集』の名歌は世界でどう訳されてきたのか
2日目の9月6日は、紀貫之の『古今和歌集』第二番歌を取り上げます。
袖ひちてむすびし水のこほれるを
春たつ今日の風やとくらむ
こちらは反対に、これまで世界各国で多く翻訳されてきた作品です。
韓国語、中国語、タイ語、ハンガリー語、ウクライナ語、チェコ語、ロシア語、フランス語、英語、ドイツ語、イタリア語――11言語の先行翻訳を比較し、それぞれの言語や文化が、この歌をどのように受け止めてきたのかを考えます。
水、氷、風、そして春。
日本人には自然に思える季節の移ろいも、異なる文化圏ではどのように理解され、どのような言葉へと変換されるのでしょうか。
翻訳を見ることは、外国語を知ることだけではありません。
むしろ、外国語という鏡を通して、日本語や和歌そのものを改めて知ることでもあります。
和歌は「古い日本文学」だけではない
今回の研究会が興味深いのは、和歌を単なる古典文学として扱うのではなく、異なる言語や文化との出会いの中で、今なお生き続ける文学として捉えているところです。
千年前の歌に詠まれた、季節を感じる心、自然へのまなざし、時間の移ろいへの感慨。
それらは決して過去の日本人だけのものではありません。
言葉や文化が違っても、人が自然を見て何かを感じ、失われるものを惜しみ、新しい季節を待つ心には、時代や国境を越えて響き合うものがあります。
世界の言葉へ移されたとき、和歌の何が失われ、何が残り、そして何が新しく生まれるのか。
そこから逆に、「和歌とは何なのか」「日本文化とは何なのか」という問いも見えてくるはずです。
AIと『万葉集』翻訳など、個人研究発表も
両日には、多言語による和歌の比較だけでなく、日本古典文学の海外受容や翻訳に関する個人発表も行われます。
なかでも9月5日には、
「デジタル人文学における古典研究および翻訳の可能性―AIと研究者の協働による『万葉集』英訳を事例として―」
という、現在ならではのテーマも予定されています。
古典文学、翻訳、国際交流、そしてAI。
和歌を入口としながら、非常に幅広い視点から日本文化の現在と未来を考える二日間になりそうです。
対面でもオンラインでも参加できます
研究会は一般の方も来聴できます。専門研究者だけを対象とした催しではありませんので、和歌や古典文学、日本文化、外国語、翻訳などに興味のある方には、ぜひおすすめしたい研究会です。
第5回研究会
「世界の中の和歌―多言語翻訳を通して見る日本文化の受容と変容―」
日時
2026年9月5日(土)10:00~17:00
2026年9月6日(日)10:00~16:40
開催形式
対面・オンラインのハイブリッド開催
対面会場
小松大学 中央キャンパス301講義室
北陸新幹線・IRいしかわ鉄道線「小松駅」から徒歩3分
参加
事前申込制
申込締切:2026年8月25日
対面参加は先着30名です。
■対面参加のお申し込み
https://forms.office.com/r/BTn2hug6EFaaa
■オンライン参加のお申し込み
https://forms.office.com/r/k1T5qMEGn9
オンライン参加者には、研究会前日の夜までにZoomの参加情報が送られます。
世界のさまざまな言葉を通して、日本の和歌をもう一度見つめ直す二日間。
普段は日本語だけで接している和歌が、世界の言語に触れた瞬間、どのような姿を見せるのか。
「世界の中の和歌」を知ることは、私たち自身の和歌を知り直すことでもあります。
和歌に親しんでいる方はもちろん、「翻訳された和歌なんて見たことがない」という方にこそ、ぜひ覗いていただきたい研究会です。
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