序
備中高梁は今や雲海に浮かぶ備中松山城で有名だが、わたしにとっては「男はつらいよ」のロケ地として、とりわけ愛すべき第32作「口笛を吹く寅次郎」の舞台として心を占めている。
草々
劇中では素朴な駅舎であったが
「見し影やいづこ備中高梁の駅(うまや)はむげに今めきにけり」(圓学)
寅次郎の跡を探して
「在り日は腹いたし男(を)とおぼゆれど今はたわかる男はつらいよ」(圓学)
「口笛の音は聞こえずしかはあれど名残さやけき石の階段(きざはし)」(圓学)
「口笛を吹く寅次郎」の見どころのひとつが、寅次郎が住職に成り代わって法事を勤めるところだ。お経なんてもちろんできないが、得意の「説法」で人々を魅了していく。はてはヒロイン朋子と結ばれんとするところまで行き着くが最後は…
「いつはりの人こそげにはまことなれ経はしらねど人を知るなり」(圓学)
寺から高梁駅を望む。わたしはいま、寅さんと同じ景色を見ている。
「高梁の里を見下ろす御堂には瑠璃光如来ぞおはしましける」(圓学)
高梁はつくづく寺の町である
「やくもゆく黒鉄の路をこえゆけば四方より集ふ御仏の国」(圓学)
「高梁はまことの人ぞ多かりき師走にたへぬ塚参りの人」(圓学)
「高梁やこの川上をたづねればわが里ちかき伯耆なるべし」(圓学)
左右に橋ありて(左は車道、右は歩行者)
「問はれれば人を選ばむ高梁のはしにつらなる風雅を行かば」(圓学)
眼前に備中松山の城山を見て
「高梁の惜しかるべくは備中の松山城を見ては登らず」(圓学)
令和六年十二月二十九日
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