1.「年の内に 春はきにけり 一年(ひととせ)を 去年(こぞ)とやいはむ 今年とやいはむ」(在原元方)
これは1100首が収められた古今和歌集の記念すべき第一首目の歌です。
「年内に春が来た。この一年を去年と言おうか? 今年と言おうか?」と、一年(ひととせ)、去年(こぞ)、今年(ことし)と時に関係する言葉が並んでいます。
使い慣れた言葉だけで構成されているのですが、内容がいまいちよく分かりません。
実はこれ、旧暦の仕組みを知ればすぐに理解できます。
旧暦つまり太陰太陽暦では月暦で生じた太陽の運行とのずれを「閏月」を挿入することで解決していました。閏月がある年は一年がおよそ384日と長くなり、年が変わるタイミングである「立春」が年内に来るのです。これを「年内立春」といいます。
正岡子規はこの歌を「しゃれにもならぬつまらぬ歌に候」と一蹴していますが、時の進行に沿った配列にこだわった貫之たち選者にとっては、これこそが古今和歌集の始まりを告げるのになくてはならぬ歌だったのです。
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(書き手:歌僧 内田圓学)
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