実況! 六百番歌合「元日宴 五番」~俊成の気迫~

時は建久五年(1194年)、左大将良経主催による歴史歴な歌合せが行われた。世にいう「六百番歌合」である。これはその模様を和歌DJうっちーの解説のもと、面白おかしく実況しようという試みである。

実況:さあ、次いきましょう。
DJ:今回は「元日宴の五番」を観戦しましょうか。
実況:ん? 失礼ですがDJうっちー、六百番のすべてを観ないのですか?
DJ:ほほー、いい度胸ですね。
実況:はい?
DJ:六百番歌合は「題詠」です。題はいくつあると思います? 百です。百の題に対してきっちり六番ずつの対戦が組まれているのです。当然ながら総歌数は千二百首、これをきっちり全部鑑賞しますか?
実況:いや~、途方もないな、、
DJ:ということで、この企画では私がチョイスしたベストバウトをご紹介します。
実況:そうですね、それがいいと思います。

DJ:話のついでに、六百番歌合の詠進は一人百首です。参加者が全員で十二人いて総歌数千二百首となりますよね、これを百の題ごとに番えていく。これも単純に並べているんじゃないですよ、詠まれた内容が近いものを選んで、面白い対決になるように仕組んでいるんです。すごい作業だと思いません? おそらく詠進よりも対戦カードを組む方が大変だったんじゃないでしょうか。
実況:たしかに、暇人じゃなきゃできない所業ですね!
DJ:まあ暇かどうかはおいといて… ちなみにこのおよそ十年後に後鳥羽院が「千五百番歌合」を催しています。とてつもないスケールだったということが分かります。
実況:さすが中世のジャイアンは違いますね。お、披講が始まりました。

講師:
左 顕昭
「睦月立つ今日のまとゐやももしきの豊の明かりの始めなるらむ」
右 寂連
「ももしきや袖をつらぬる杯にゑひをすすむる春の初風」

右の方人:「睦月立つ」とはなんだ? 聞き慣れない詞だが
左の方人:こ、これは万葉集に載る由緒ある詞であるぞ!
右の方人:「豊の明かり」とははっきりしないが
左の方人:こ、これは宣命に見える由緒ある言葉であるぞ!

実況:DJうっちー、これはどういうやりとりですか?
DJ:もうこの対決にすべてが見えています。つまり歌合とは故事古典の知識が優勝劣敗を決める競技であったのです。歌にある不確かな言葉を見つけ、正しく難癖をつけられるか。対してそれに反証できるか否か、この攻防であったのです。

実況:うう………つ、つまらん、、
実況:うっちー、俺はこんなつまんねぇ実況やりたくねえよ!
DJ:ただ…
実況:??
DJ:六百番歌合は伊達じゃない!
実況:(アムロっすか?)

DJ:すみません。いや、あまたの歌合があった中でこの「六百番歌合」だけが後世に伝説的に語られるのには訳があるんですよ。
実況:というと?
DJ:俊成です。
実況:あのジジイっすか!?
DJ:そうです、判者俊成の「判じ」こそが革命的であり、この歌合を永劫に輝かせているのです。それは一言で「美の志向」です。さっそく判じを聞いてみましょう。

判者:詞に証拠があるという、結構なこと… しかし!! だからなんだというんじゃ!
判者:左方、万葉集がうんたらと申したな。万葉集にあるといってなんでもOKだと思うなよ。あれは俗な言葉や歌の病も多く、歌合で安易に証拠があるなんぞ言うもんではない! ついでに宣命に見えるといったな。確かにそうかもしれん… しかし、それがなんぼのもんじゃい! 
判者:いいか左右おのおの耳の穴かっぽじってよく聞いておけよ、「歌の風体」! お主らが真の詠み人というのなら、歌そのものの風情で勝負をつけんかい!
判者:よってこんなの勝負にならん、引き分けじゃ。

左右方人:ゴクリ…

実況:な、なんちゅう気迫… すげえよあのジジイ! 俺は感動したよ!
DJ:俊成卿、あなたはもっと評価されるべきだ!

(つづく)

「実況! 伝説の対決 六百番歌合」一覧

(書き手・解説:和歌DJうっちー)


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