古今和歌集美の系譜 ~紀貫之からX JAPANへ~

紀貫之から始まる「古今和歌集」の美の系譜が「X JAPAN」に繋がっている、と言ったら驚かれるでしょうか?

X JAPANとは言わずもがな、ヴィジュアル系の先駆者であり現在も影響力のあるアーティストです。
ちなみに「ヴィジュアル系」ですが、wikipediaには「視覚表現により世界観や様式美を構築するものであり、特定の音楽ジャンルを示す呼称ではない」と説明されています。ただその「視覚表現」に捉われると、いつまでたっても「古今和歌集」は現れてはきません。その繋がりは、歌(歌詞)に見ることができます。

X JAPANの楽曲の歌詞を眺めてみると、「夢」「涙」「記憶」「孤独」「夜」「薔薇」といった単語が多いことに気付きます。彼らの歌に描かれているのは、寂寥感を夢や幻想で埋める孤独な男。

※例えば以下の楽曲
『Silent Jealousy』
『Rusty Nail』

早晩答えに近づきました。そう、これは古今和歌集の「恋歌」です。

「恋歌」には全360首の歌が収められていますが、そこにあるのは「叶わぬ恋」や「失った恋」への煩悶。愛しい人を失い孤独に忍び泣き、欠落した愛情を雪月花に求める… なんという女々しさの極致でしょうか。

同じ男としては「もっと積極的にいけ」とか「もっと前向きになれ」とかアドバイスしたくもなりますが、言っても無駄でしょう。なぜならばこれが彼らの「美学」なのだから。

そしてこの美学を共有しているのが、X JAPANはじめとするヴィジュアル系なのです。彼らの歌に描かれるのも煩悶する孤独な男。その悲劇を美しい「情景」にこめて歌う。この様式美こそが、ヴィジュアル系を「ヴィジュアル系※」たらしめている要点といえます。

一方でヴィジュアル系は、新しい美的表現を備えています。攻撃的なサウンドです。当初はへヴィメタルに括られることもあったX JAPANは、寂寥の歌詞を甚大で高速なサウンドに載せる。「柔」と「鋭」とのギャップが絶妙に調和した、ヴィジュアル系ならではの新しい優美の世界を創り出したのです。ここに進化した古今和歌集の形が見えるではありませんか!

文化とは、進化してこそ文化なのです。寂寥感に酔いしれたまま、進化の途絶えた和歌は、明治依頼の欧米マッチョイムズの前にひとたまりもなく潰さてしまいました。しかし平成になり、このヴィジュアル系によってようやく進化を遂げたのです。

「古今和歌集」と「X JAPAN」繋がっている気がしません?

(書き手:和歌DJうっちー)


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