むかし、としよりはこのように語った…
最近の歌と言えば「題詠」が基本だわな。しかし容易なようで案外難しいのがこの題詠というやつじゃ。そこでな、今日は四季歌における折々の題に応じた相応しい詠み方というのを教えてやろう。
はじめにいっておくがな、これ本当に大事な話だから。聞き逃さんように耳の穴掻っ穿って正座して聞けよ。
たとえば春、いつの間に春が来たのだろうというのを詠もうと思ったら、まず佐保山が霞の衣を着たと言ってこれを春風でチラリとめくり、霞で峰の梢が見えなくなったと言って心をソワソワさせて、梅が匂い始めたといって鶯を誘い、子日に引く松にかこつけて大切な人が長生きすることを願い、若菜を互いに摘んで思いの重さを知り、残りの雪が溶けるのを自分自身の儚さに重ね、待ち望んだ桜の花が咲けば落ち着かない心を詠み、それを白雪に見立ててもしかして春の雪? なんてわざとらしく驚き、やがて散らせる風を恨み、折に降る雨を自分の涙と言ってみたり、青柳を糸に見立てて思いを撚るとか乱れて繰り返すとか、桜と柳どっちを見に行こうかと迷ってみたり、ちょっとした草が生えるにも蕨でないかと疑い、里山の農夫の気持ちになりきってみたり、三千年に一度実がなるという桃が今年こそ初めてなるじゃんないかと期待し、春がむなしく過ぎ去るのによせて、自分が今年もむだに年を重ねていくことを嘆く…
と、どうじゃ、このように詠むんじゃよ!
わしが今言うたことを心に留めておけば、バカでもそれらしい歌は詠めるじゃろう。
お、めずらしく今日はいい話を聞いたという顔をしとるの。よきこと、よきこと。
しかしな、あくまでもこれは春、まだ夏、秋、冬と歌に詠むべき和歌の心というものがあるのじゃ。
聞きたい? う~ん、残念、ここからは有料じゃ!
としよりのひとり語りはつづく…
(聞き手:和歌DJうっちー)
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