「溶く(とく)」 ~美しい日本語の四季(その4)~

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4「雪の内に 春はきにけり うくひすの こほれる涙 今や溶くらむ」(二条の后)

「溶く」とは「溶ける」の古語です。
春になって暖かくなれば、池の氷や軒から下がる氷柱が融けることになんら違和感はありませんね。
しかし歌では「うぐいすの凍った涙」が溶けると詠んでいますから驚きです。

この歌には物語があります。春を象徴する鳥、うぐいすは冬の間その訪れを待ちに待っています、さながら愛しい人を待つように。目には涙がたまりやがてその滴は凍ってしまった。春が来た今、凍り付いたこの涙は融けるのだろうか。

実はこれを詠んだ二条の后(藤原高子)は、伊勢物語で在原業平と恋仲であったと語られています。そしてその関係は周囲の圧力によって引き裂かれたとも。高子が待ち望んだ春とはもしかして…。
歌の背景知ると、また別の物語を妄想できるのが和歌の面白いところです。

(書き手:歌僧 内田圓学)
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