風かよふ寝覚めの袖の花の香にかをる枕の春の夜の夢(俊成卿女)

『泣き濡れた私の袖を、春風はやさしく愛撫する。桜の匂い、それは枕にも移って。まるで夢の中でも花が舞っていたよう』。
また野暮になった… 何度も言うが芳醇な新古今歌は適訳に向かない。しかしこの歌は「春下」に採られているが、四季歌に収まるだろうか? わたしには妖艶な恋の匂いしかしない。
詠み人は俊成卿女。名のとおり血縁上の祖父であり、歌道上の父であるのは藤原俊成だ。ゆえに定家とも関係は深い、しかし! 彼は百人一首に俊成卿女を採らなかった。なぜか? 定家には強烈な嫉妬心があったのだ、新古今を象徴する官能詩において自分より優れた彼女を恐れたのだ。

(日めくりめく一首)

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