雪ふりて人も通はぬ道なれやあとはかもなく思ひ消ゆらむ(凡河内躬恒)

昨日と同じで今日も待ち人の歌。しかし和歌で待つといえばほとんど叶わぬ虚しき夢だが、これが雪で冷たく閉じられた里である、もう絶望的だ。『雪が降って誰一人通わない道だから、私の思いなど跡形もなく消えてしまうだろう』。詠み人は凡河内躬恒、古今歌人らしく「雪」と「跡」、「消ゆ」と丁寧に縁語を詠み込んだ。このようなデスペレートを歌にして何になろう? 違う、平安の歌人たちは絶望にこそ美を看取した。決して叶わぬ夢に煩悶する、その様自体に美しさを見出したのだ。

(日めくりめく一首)

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