衣手は寒くもあらねど月影をたまらぬ秋の雪とこそ見れ(紀貫之)

昨日のがいかにも定家だとしたら、今日のはいかにも貫之だ。『着物の袖は寒くないけど、月の光は積もらない秋の雪のように見える』。白々とした月明かりを雪に見立てる古今的常套句、「衣手は寒くあらねど」という理知的発想が甚だわざとらしく、ある意味心底から身震を感じる歌だ。しかしこれも和歌の一面、要するに和歌的プロトコルを正しく踏めば、誰でも一定水準の歌を詠めるということ。今日の歌だって、宴会で求められて即興的に詠んだものかもしれない。

(日めくりめく一首)

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