苔の庵にひとりながめて年も経ぬ友なき山の秋の夜の月(源実朝)

昨日一昨日と歌人の個性が見事に光った月であったが、今日もそうであろうか? 紛いなりにも源実朝は、鎌倉幕府第三代将軍であった。しかしその座に就いたのは十一歳のころ、もちろん大人に担がれた飾りである。父頼朝は謎の変死、兄頼家は暗殺、頼るべき身内、御家人らは企てに熱心で休まる心地などまるでなかったのだろう。でなければ今日の歌など出てくるはずがない。『一人眺めるばかりで友などいない』、彼の歌には常に圧倒的な絶望感が横たわっている。いっそ定家ら新古今歌人のように「夢世界」に逃避出来たら、ずいぶん楽に生きられたかもしれない。

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