花さそふ名残を雲に吹きとめてしばしはにほへ春の山風(飛鳥井雅経)

飛鳥井雅経は百人一首では参議雅経の名で採られ歌道飛鳥井家の祖であるが、もしかしたら流蹴の達人としての方が知られているかもしれない。彼の妙技は後鳥羽院をも魅了し、「蹴鞠略記」という著書も残した。ちなみに蹴鞠だが、中大兄皇子と中臣鎌足が出会のシーンがそうであったように、すでに7世紀ごろから親しまれている。日本が得意とするポゼッションフットボールの伝統は伊達ではないのだ。
さて肝心の歌であるが、こちらも見事な情景歌である。花と雲を連絡させるのは常套だが、その芳香を雲に残して散りてなお春風に何度も匂いを送ってほしいと願う。落花の歌だが湿っぽいところがなく、むしろこの時期らしい爽やかな陽の光とそよ風、そして照り映える白雲が印象に残る風情十分な歌である。

(日めくりめく一首)

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