秋風の袖に吹きまく峰の雲を翼にかけて雁もなくなり(藤原家隆)

正直申し上げて新古今のなかでも新古今たる歌に解釈を与えるのは腰が引けていた。しかしこれらがシュルレアリスムの作品であると分かってから、ようやく面と向かう心構えが出来た次第だ。
さて今日の歌、『秋風が袖に吹き巻いている峰の雲を翼に掛けて雁が鳴いている』と、適訳したところで雲煙模糊であることに変わりはない、まず句の切れ目はどこにあるのか? 雲を玉梓に見立ててはいるのだろうが、それでは二句の袖といかに連絡するのか? このように筋を探すと痛い目にあう。この歌は「自動記述」なのだ、家隆という才能が紡いだ「無意識の美」の連鎖であるのだ。

(日めくりめく一首)

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