白露も時雨もいたくもる山は下葉残らず色づきにけり(紀貫之)

今日からはしばらく「時雨」にお付き合い頂こう。ところで同じ「雨」という気象現象を春は「春雨」といい秋には「時雨」という。この分別は「一季一景」の原則のみにあらず、詠むべき風景にも明々たる規定を設けて精緻なこだわりから生じている。思うに自然に対するこの執着心が日本文化の根幹なのだ。さて、詠み人は紀貫之、『守山はその名の通り白露も時雨もひどく漏るので、木々の下葉も残らず色づくのだなぁ』。採られた古今集らしく機知に富んでいるが、貫之が偉大なのは掛詞をフックにしつつも印象に残る情景を描き切る。それはひとえに「下葉」という繊細な着眼による。

(日めくりめく一首)

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