沢水に空なる星のうつるかと見ゆるは夜半の蛍なりけり(藤原良経)

詠み人に良経とあるが、その仮名序をも記した新古今時代の才器ではない。藤原行成の子である。後拾遺和歌集に採られた歌であるが、意外にも蛍という言葉が明確に四季に詠まれたのは、この集が初めてである。蛍は「火」と「思ひ」を掛け、多く恋歌に詠まれるものであったのだ。
歌であるが『沢水に映る星を見てみれば蛍であった』と、人工的な洒落臭さが鼻を突く。しかし街をイルミネーションでギラギラに、棲み処も奪っておきながら、蛍こそが夏の原風景であるとうそぶぐ私たち現代人にはお似合いであろう。

(日めくりめく一首)

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