梅の花くれなゐにほふ夕暮れに柳なびきて春雨ぞふる(京極為兼)

濃厚な新古今の味わいは、当の定家でさえも長続きしなかった。和歌はまた、つまらぬ常套に帰ってゆく。しかし、希望の光は思わぬ方から差してきた。定家のひ孫為兼による京極派である。定家その子為家亡きあと、御子左家は二条、京極、冷泉の三家に分かれた。嫡流は為氏、為世と繋がる二条家である。鎌倉、室町の勅撰集の撰進もほぼこの二条家によるものだ。本流を継ぐ者の歌は変化を許さない。これに対抗したのが今日の歌人、京極為兼なのである。見よ、このあさっりした写実的な風景を。薄紅と緑青にうるおう光の印象を。京極派はまさに、近代の印象派のごとく現れたのである。

(日めくりめく一首)

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