桜花さきにけらしなあしひきの山のかひより見ゆる白雲(紀貫之)

その時は来た! 花はついに咲き初める。待ちに待った思ひとはうらはらに、和歌ではその美しさを直接称えることはしない。多くは霞に隠して影ばかり匂う様を歌うとか、清らなる白さを類似のものに見立てて詠む。今日の歌ではそれが山の峡(かい)から見える「白雲」というわけだ。ちなみに現代で「桜色」というと「淡紅色」を連想するかもしれない。しかしそれは「ソメイヨシノ」の影響が強い、淡紅はその一方の交配種「エドヒガン」の特徴だ。吉野山など、和歌で詠まれるのはもちろん「ヤマザクラ」であり、その色の多くは純白である。さて、いよいよ四季歌のクライマックス、桜の歌群が花を開く。

(日めくりめく一首)

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