桜咲く遠山鳥のしだり尾のながながし日もあかぬいろかな(後鳥羽院)

『桜が咲いた。遠くの山鳥のしだり尾のように、なが~くなが~く何日も眺めても見飽きないなぁ』。詞書きには「釈阿、和歌所にて九十賀し侍りしをり」とあり、藤原俊成のいっそうの長寿を言祝んだ歌である。しかしこの大らかさは後鳥羽院ならではだろう。お気づきのように歌は百人一首では柿本人麻呂作として採られた「あしひきの※」を本歌にしているが、本歌取りというにはあまりにも丸パクリである。しかも季節感を無視(山鳥は本来秋の景物)し、まるで時間が止まったかのように優雅な自己中心世界はさすが後鳥羽院というような帝王の詠みぶりだ。

※「あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む」(柿本人麻呂)

(日めくりめく一首)

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