松の葉の白きをみれは春日山こもめもはるの雪ぞふりける(源実朝)

松の葉にかかる白いものを見ると、あぁ春日山に春の雪が降っているなあ。木の芽も張って。という歌である。芽が「張る(つぼみが膨らむ)」と「春」の掛詞が見えるが、ほとんど凡庸な歌である。ところでこれには本歌がある。「霞たちこのめもはるの雪ふれば花なきさとも花ぞちりける」(紀貫之)。本歌は「花(桜)」なので芽が張るのも理解できるが、「松」はいかがなものだろう? さて作者はだれあろう、鎌倉代三代将軍源実朝である。所収は若干22歳でまとめられた「金槐和歌集」、つまりこの歌は、東の田舎青年が貫之への憧れ一心で詠んだ歌なのである。子規以来、実朝を万葉風歌人と決めつける方がたくさんおられるが、大きな誤りである。

(日めくりめく一首)

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