惜しめどもとまらぬ春もあるものを言わぬにきたる夏衣かな(素性法師)

昨日に続き新古今集の夏からその二番、素性法師の更衣の歌である。素性といえばウィットに富んだ歌で古今集を代表するが、その滑舌は狂言綺語の並ぶ新古今にあっても淀みない。『惜しんだって春は止まらない。だからって、なんで着たくもない夏衣を着てんだよ、俺は!』。おわかりいただけただろうか、この歌の爆笑ポイントは夏衣を「着る」と、夏が「来(来の連用形)」たるという掛詞にあるのだ。さすが素性法師、期待を裏切らない。だがこの歌の見どころはそこではない、季節は移ろへど春への変わらぬ思慕にある。

(日めくりめく一首)

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