心あてに折らばや折らむ初霜の置きまどはせる白菊の花(凡河内躬恒)

百人一首には撰者の審美眼を疑う歌も散見されるが、今日の一首は間違いなく凡河内躬恒の渾身の作品だ。『当て推量で手折ってみようか、初霜が置いて見分けがつかなくなった白菊の花よ』、霜がびっしりと付いていっそう際立つ白菊の美しさ、というのが一般的な批評であろう。しかしこの歌はそれほど陳腐ではない。「雪月花」、これら自然美の象徴がいずれも「白」であることは偶然ではない、和歌ひいては日本美にとって白とは格別であると知るべきだ。白と白とが共演いや競争する一面の白銀世界、耽美を超えてサイケデリックを極めている。

(日めくりめく一首)

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