常よりも睦まじきかなホトトギス死出の山路の友と思へば(鳥羽院)

ホトトギスはことに詩情を駆り立てる、まこと和歌において欠かせない存在だ。今日の歌を見よ! このような歌われ方もするのかと驚愕を覚える。『いつもよりも親しく感じられるよ、ああホトトギスよ。死出の山路の道案内をしてくれると思うと』。ご存じだろうか? 人は死すると冥途に向かうが、そのまず初めに立ちはだかるのが「死出の山」だ。輪廻するとはいえ、たいていはこの険しい山で人は迷う、そこで道案内をしてくれるのがホトトギスだというのだ。ここ平安の末期に至って、慕情を誘った懐かしき鳴き声は、なにやらおどろおどろしいものに変わっている。詠み人は鳥羽院、詞書には「煩はせ給ひける時…」とあるが、冗談半分なのだろうか? いや、諸寺を創建した鳥羽院である、これは紛うことなき本心の吐露なのだ。抒情が仏教観に取って代わった時、時代は中世となる。

(日めくりめく一首)

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