帰る雁羽うちかはす白雲の道ゆきふりは桜なりけり(藤原為家)

今日も「帰雁」である、が! ついにこの言葉が表れた、「桜」だ。『羽を交わしながら空の旅路を行く雁、あの白雲は桜の花道なんだ』。白雲と桜、これらは清らなる白さを互いに称え見立て合う。詠み人は藤原為家、言わずと知れた定家の子である。「続後撰集」と「続古今集」の二つを撰進、父を超える権大納言にまで昇りまさに歌道の人として満帆の花道を歩んだ。晩年は「十六夜日記」で知られる阿仏尼と子為相を溺愛し、これが三家分裂のきっかけとなる。
さて、所収は風雅集であるが歌はその基調をなす京極風ではない。しかし歌からは去りゆく雁の優雅さとともに、次にめぐりくる桜の華やかさを期待させ、強く風雅を感じる心地いい一首である。

(日めくりめく一首)

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