山吹の花咲きにけり蛙なく井手の里人いまや問はまし(藤原基俊)

春暮れて桜もとうになくなった。それではということで余所に目をやると、まず飛び込んでくるのが山吹の花だ。山吹は蛙(歌語では“かはづ”と発する)との取り合わせが一般的だが、これは河岸に咲く山吹が一興とされたからだ。ではなぜ山吹と河岸かというと、私にもよく分からない。古代民謡か漢詩由来か? ともかくこの趣向はすでに万葉集に表れている。「蛙鳴く神奈備川に影見えて今か咲くらむ山吹の花」(厚見王)。
それで今日の歌であるが、驚くべきに万葉集の時代から一歩も進んでいない。作者は藤原基俊、百人一首にも歌が採られ平安中後期には歌の指導的立場にあった人だ。彼は古歌を重んじたらしいが、しかしもう少し工夫はなかったのだろうか。

(日めくりめく一首)

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