奥山に紅棄ふみわけ鳴く鹿の声きく時ぞ秋は悲しき

今日は古今集から「よみ人知らず」による「鹿」の歌をご紹介しよう。『人影ない奥山で紅葉を踏み分けながら鳴く鹿の、その声を聞くと秋の悲しさが募る』。この歌にある和歌の約束事は明白、一つ「鹿は(奥山など)独りで鳴く」、決して奈良公園ではない。二つ「牡鹿が牝鹿を求めて鳴く」だ。ここまで類型化が徹底されると趣向の違う歌はほとんど詠めない。
さて今日の歌、百人一首ではご存知のとおり「猿丸大夫」の名で採られる。正体不明の伝説的人物だが大夫ということで「五位の官人」、他は「古今集仮名序」、「三十六人撰」になど名を残している。

(日めくりめく一首)

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