夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里(藤原俊成)

『夕方になると野辺の秋風が身にしみる。あぁ深草の宿で鶉が鳴いているよ』。鶉というと今の人はまず卵を思い浮かべるかもしれないが、その鳴き声といえば鶏ほどではないが割にけたたましい。一見すると歌の風情に合わなそうだが、歌の背景を思うと鶉の鳴き声はかえって大きい方がいい。実はこの歌、俊成は伊勢物語第百二三段(深草)※の後日談として詠んだ。だから男が去って深草の野となり果てた里、そこから遥か遠くの都まで、聞こえるほどの大きさでなくてはならない。

※「野とならば鶉となりて鳴きをらむ狩だにやは君はこざらむ」(伊勢物語 第百二十三段)

(日めくりめく一首)

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